世界的なIPに対して、ゲームでしか生み出せない価値を付加する――IPゲームプロデューサーの仕事を『ONE PIECE バウンティラッシュ』の“たなP(田中 耀平)”が語る

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世界的なIPに対して、ゲームでしか生み出せない価値を付加する――IPゲームプロデューサーの仕事を『ONE PIECE バウンティラッシュ』の“たなP(田中 耀平)”が語る

 

原作・アニメ共に国民的人気を誇る、週刊少年ジャンプで連載中の『ONE PIECE』。同IP(キャラクター等の知的財産)を活用した『ONE PIECE バウンティラッシュ』のプロデューサー 田中氏が、バンダイナムコエンターテインメントのプロデューサーの仕事術を語ります。

版権元、開発会社、そして社内の関連部署など多方面と目線を合わせ、「関わるメンバーが同じ視点でIPに携わる」土台を作るのもプロデューサーの大切な仕事。版権元となるパートナー会社よりIPをお借りして制作するタイトルにおける心構えや、自身も中途入社という立場から見た同社の社風まで、「バンダイナムコエンターテインメントにおけるゲームプロデューサーの仕事」について幅広く解説していただきました。

 

IPゲームプロデューサーの仕事は、ゲームの立場からIP価値を最大化すること

―――今日は「プロデューサー」という仕事について、多方面でお聞きできればと思います。まずは自己紹介をお願いします。

第1IP事業ディビジョン 第3プロダクションの田中です。第1IP事業ディビジョンは名前の通りIPを活用したゲーム制作を行う事業部で、その中でも第3プロダクションは『ONE PIECE』IPに関連したゲームを中心に展開を行っています。

私は現在、ゲームプロデューサーとしてスマートフォン向けゲームアプリ『ONE PIECE バウンティラッシュ』(以下、バウンティラッシュ)に携わっています。「どの時期にどのキャラクターを登場させるのか?」といった運営面の方針や開発会社との協業だけでなく、版権元や社内担当者とコミュニケーションを取りながら最適なプロモーション施策を模索するなど、タイトル全体の方向性を考える立場となります。
 

―――田中さんはもともとプロデューサーとしての経歴はなく、バンダイナムコエンターテインメントに入社してからプロデューサーを務めるようになったと伺っています。前職時代のキャリアと、プロデューサーを志した理由を教えてください。

前職はプラットフォーム事業を展開する会社で、私自身は自社プラットフォームにゲームを展開していただくためのアライアンスを担当していました。開発会社がどのようなゲームを作るべきかの相談に乗り、他タイトル事例をもとに機能提案をしたり、売れやすい仕組みを一緒に考えたりするなかで、「自分の色が作品に入っていくこと」を面白いと感じるようになりました。

ここから発展して、より主体的にゲームに関わりたいと考えるようになり、バンダイナムコエンターテインメントのプロデュース職に挑戦することになりました。このときは転職サイト等は使わず、公式WEBサイトから普通に応募をしましたね。バンダイナムコエンターテインメントはひとつのIPに固執することなく、多種多様なIPを丁寧にプロデュースして成長している印象を持っておりましたので、ぜひ一緒に働きたいと思っていました。個人的にも『週刊少年ジャンプ』が大好きで、好きな作品も多かったのも理由のひとつにはなっていました。
 

 

―――ゲーム会社におけるプロデュース職は予算を含めたプロジェクト全体の責任者という位置付けだと思いますが、バンダイナムコエンターテインメントの「プロデューサー」はどのような仕事なのでしょうか。

扱うタイトルによって性質が異なります。私が所属する第1IP事業ディビジョンで制作するタイトルの多くは版権元からIPをお借りして制作していることから、独りよがりな施策を打とうと思っても成立しません。版権元との信頼関係の構築を続けた上で、ゲームだけでなくIP全体の貢献を考えて動くことが求められます。

ゲームの売上を立てること自体も重要ですが、『ONE PIECE』が盛り上がればゲームも盛り上がりますし、ゲームが盛り上がれば「漫画・アニメを見てみよう」あるいは「また作品を見返そう」という方も出てくるはずです。こうした好循環を作ることも仕事内容になります。
 

―――IPに対して、ゲームという立場からどう貢献できるかを考えているということですね。

 
 

『バウンティラッシュ』の“たなP”として、表舞台に立ち続ける理由

―――プロデューサーは他職種と比べて前面に立つ機会が多いですが、田中さんは「たなP」として生放送に登場したり、プレゼントや報酬を配ったり、ユーザーからも大いに親しまれていますね。

ありがとうございます。生放送などでも、ユーザーが一番期待している情報は、私が自分の言葉で伝えるようにしています。最新のアップデート情報も、私がこう考えているからこうなっている、という内容を自分自身で伝える必要があります。プレゼントも、単純なログインボーナスよりは「たなPからのプレゼント」の方が少し愛着をもっていただけるかな、と思っての施策です。

こういった動きには理由があって、根底には運用タイトルにおいて「誰が運用しているのか」を明確化したいという考えがあります。運営とプレイヤーを繋ぐ象徴として、みなさんと直接的にコミュニケーションを取る役割として、定期的に情報発信をしたり、メディアに出たりしながら、距離の近いファンコミュニティを作るように心掛けています。
 

 
 

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―――「誰が運営しているのか」、その顔になるという意味合いですね。ちなみに、開発会社との距離感や関係性はいかがでしょうか?

開発の方々とは仲が良いですし、互いに信頼しながら仕事できている感覚はあります。キャラクターの登場ラインナップは開発側と一緒に相談しながら決めていますし、「このキャラならこの技は外せない!」「登場演出は絶対にこだわりたい!」など議論も活発です。「いつ、どこで、どんなコンセプトでキャラクターを登場させるか?」を決めるのもプロデューサーの役割ですからね。

例えば、4.5周年で登場した「鬼ヶ島怪物決戦キッド&ロー」は、作中初となるダブルキャラですが、ちょうど近い時期にアニメで共闘シーンが描かれていたんです。本来、短期的な売上だけを考えれば別々で出したほうが良いはず。それでも、協力してビッグマムを倒すという「アツいシーン」の熱量をそのまま出したいということで、開発側と協力しながら実現に向かうことができました。
 

 

―――対戦ゲームがベースのため、メタが回ったり(※)、意図的な強キャラを出しにくかったり、調整面でも考えることは多そうです。

アニメなどとの関連も含めて、IP全体の視点でタイトルの方向性の舵取りをするイメージです。でも、やっぱりルフィなら絶対強くしたいじゃないですか。そのあたりをどう表現するかは、対戦ゲームという性質上すごく難しい部分ですね。
 


 

メタゲーム。戦術の流行・傾向から生じる駆け引きなど、ゲーム外要因による意思決定を指す。強力なキャラクターA(トップメタ)に対して有効なキャラクターBが流行し、更にキャラクターBに対して有効なキャラクターCが流行する、といった様子を「メタが回る」と表現する。
 

―――これまでのお話を聞いていると、版権元だけでなく、ファンに対しても、そして開発会社や社内のマーケティング、プロモーション部署ともやり取りが発生すると考えると、非常にコミュニケーションが多い仕事だと感じます。

「関係者全員の目線を合わせること」がプロデューサーの役割です。お互いが別の方向を向いていると、プロジェクトがうまくいきません。対開発会社では、対戦ゲームとして面白くするのか、一人でカジュアルに遊べる作品を目指すのか、どちらを重点に置くかによって開発機能の優先順位も変わります。

対プロモーションで言えば、「誰をターゲットにするのか」を明確化する必要があります。『ONE PIECE』原作ファンなのか、対戦ゲームファンなのか、想定ターゲットによって訴求方法も変わります。今の時期であれば『ONE PIECE』アニメがワノ国編のクライマックスに向けて盛り上がっているタイミングので、そこに向けて施策を打つのが適していますよね。
 

―――“目線を合わせるのが役割”というのは良い言葉ですね。田中さん自身が明確なビジョンを持っているからこそ、開発面もプロモーション面もブレずに一貫した仕事ができているということですね。

そうでありたいですね。そしてもちろん、対IPの考えもあります。冒頭でもお話しした通り、私たちは「『ONE PIECE』全体の盛り上がりのためにゲームが貢献できること」を実現する必要があります。ゲーム側がIPのために動ける部分としては、例えば「対戦ゲームファンが流入し、新たにIPのファンになっていただく」などが考えられます。そのような狙いもありながら、対戦ゲームとして成熟したコンテンツであることを示すために、また、ファンへの感謝の気持ちを込めて、2023年から『ONE PIECE バウンティラッシュ 超奪取祭』というオフライン大会も開催するようになりました。

対戦ゲームの文脈から熱量が高まり、アニメや漫画、あるいはグッズ購入などに発展する機会づくりを行うことは相互のメリットになると考えました。もちろんファン目線で見ても、4人1組で出場する団体戦のため、仲間やチーム同士で交流する良い機会となったと思います。友達がいれば継続しやすくなりますし、ゲームが継続すればIPのためにもなります。これはゲームにしかできない、アプローチのひとつだと思います。

 

必要なのは主体性と熱量。ポジティブに周りを巻き込んで、よりよいIPコンテンツ創出を目指す

―――ここまで、プロデューサーの多分野にわたる仕事内容をお伺いしてきました。プロデュース職に興味のある方が、かつての田中さんと同じようにバンダイナムコエンターテインメントの門を叩く場合、どういった素養が求められるのでしょうか。

コンテンツへの愛を持てるかどうかが必要だと思います。その作品を熟知しているからこそ、「こうあるべき」という思想が生まれます。加えて言えば、ゲーム好きで日常的に様々なタイトルを遊んでいることも重要ですね。

素養という観点では、日々世間ではどのようなプロモーションが行われて、業界全体がどう動いているのかの情報をキャッチできる人が向いていると思います。また、版権元や社内外含めてコミュニケーションがすごく多いので、交渉力も大切ですね。どんなに面白いゲームができたとしても、世の中に出なかったら意味がありません。版権元など関係者から承認いただけなかったら、そもそも作ることもできませんからね。

また、プロデューサーそれぞれで価値観や方向性、進め方は違います。交渉に長けているプロデューサーや開発の深い知見を持つプロデューサー、あるいはマーケティング・プロモーションに強いプロデューサーなど特色はさまざまですが、大事なのは「自分なりのプロデュースができること」。自走できて、情報も自分で取りに行き、キャッチアップできる方が理想です。
 

 

―――なにか武器を持っていて、それが自分なりのプロデュースに繋がっていくことがベストであると。その意味では、プロデュース職自体は未経験でも、プロデュースのやり方を社内で教えるような仕組みがあるのでしょうか?

私が中途入社した当時は、正直なところ現場で走りながら覚えるようなかたちでしたが、今は業務新人向けの教育機会やアシスタントとしてプロデューサーの近くで仕事を学ぶ機会などキャッチアップしやすい環境が整ってきています。ただ、プロデュースは答えのない分野です。いくら調査をしても、絶対的な正解は見つかりません。結局は自分が今まで何をやってきたか、自分の経験が一番の武器になります。

同時に、自分が何に強いのかを理解するのと同じく「弱い部分」も把握しておけば、不足している部分は周りが助けてくれます。これは社内で活躍する人材層の厚さ、互いに助け合おうという姿勢、一緒に協力したり、相談したりする相手が多いというメリットが働いています。
 

―――ありがとうございます。最後に、記事を読んでバンダイナムコエンターテインメントに興味を持った方に対してメッセージを頂ければと思います。

バンダイナムコエンターテインメントは数多くの作品を展開しているため、自分の好きなコンテンツに主体的に携わる機会も多いと思います。これは仕事において大きなモチベーションになります。もうひとつの良いところは、やりたいことを声にして出せば、しっかりと任せてもらえる文化があること。IP活用について明確な考えを持っている方、IP活用に対して高い熱量を持つ方が向いていると思います。

人の心を動かすのは定量的なデータではなく、エンタメの持つ熱量です。そして、その熱量を生み出すためには、多くの人を巻き込めるだけの言語化能力とコミュニケーション能力が必要です。ある程度ベースとなるゲーム業界の知識は必要になりますが、こうしたIP活用に高いモチベーションがある方と是非一緒に働きたいと思っています。
(取材・対談者:神山 大輝 / @gula_sound )

 

 

©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション
©Bandai Namco Entertainment Inc.

 

バンダイナムコエンターテインメントのプロデュース職は、IPファンのニーズの具現化を目指しています。版権元や開発会社などのパートナー会社と協力して、ゲームならではの体験価値を考え、IP全体の発展へ貢献していきます。

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