カプコンの『テクニカルアーティスト』って何する人? 自由に意見を言い合う環境と、強みを生かして連携できる体制が魅力
カプコンの『テクニカルアーティスト』って何する人? 自由に意見を言い合う環境と、強みを生かして連携できる体制が魅力
1983年の創業以来、ゲームというエンターテインメントを通じて、人々に笑顔や感動を提供し続けてきた株式会社カプコン。社員が「おもしろい」、「やりたい」と感じる気持ちを大切にし、『モンスターハンターシリーズ』、『バイオハザードシリーズ』、『ストリートファイターシリーズ』など、世界中で支持される多くの作品を展開してきました。
「大阪から世界へ」を合言葉に、今後も世界一面白いデジタルコンテンツを全世界に発信することを目指す同社での仕事の魅力ややりがいについて、テクニカルアーティスト(TA)とリガーにお話いただきました。前編ではテクニカルアーティスト、後編はリガーの2部に分けてお届けします。
座談会登壇者
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CS第二開発統括 開発三部 テクニカルマネジメント室 竹井 翔(タケイ ショウ)氏
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新卒入社。エフェクト制作からキャリアをスタート現在はテクニカルアーティストに転向し、エフェクトに特化したテクニカルアーティスト業務及びインゲームエフェクトの制作を担当。
- GAME CREATORS CONFERENCE SideFX&ボーンデジタルスポンサーセッション / 「モンスターハンターワールド|Houdini」 -Houdiniエフェクトアセット作例紹介-
- CEDEC プロシージャルゲームコンテンツ制作ブートキャンプ Part 1 はじめに
- CEDEC 「モンスターハンター:ワールド」のエフェクトエディタについて講演
代表作:モンスターハンターワールド / アイスボーン
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CS第二開発統括 開発三部 テクニカルマネジメント室 宮本 卓郎(ミヤモト タクロウ)氏
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中途入社。入社時はキャラクターモデラーとして入社。モデルを作りつつ一方で、効率化/テクニカルな部分でのより良い表現の模索をしていたことをきっかけにテクニカルアーティストに転向。モンスターハンターワールドではプレイヤー装備モデル制作を担当
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CS第二開発統括 開発三部 テクニカルマネジメント室 北村 知夏(キタムラ トモカ)氏
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新卒入社。モンスターハンターライズのシェーダーを担当。現在は、キャラクターや背景などアート全般のテクニカルアーティスト業務に従事。
講演歴:CGWORLD
クリエイティブカンファレンス2020 モンスターハンターライズシェーダーについて
カプコンのテクニカルアーティスト(TA)は相談役
―――テクニカルアーティストのゲーム開発における役割を教えていただけますか。
基本的には業界内でも新しい職種で、ここ10年くらいでできたかなというところです。
業界がテクニカルアーティストを採用したいって言い始めたのは結構最近ですよね。
今までもその役割の人はいたけど職種名として確立し始めたのは数年前からです。
基本的にはリソース制作が中心となるのですが、それに伴うツール制作であったり、ワークフローのパイプラインもしくはレンダリングのパイプラインの構築を行います。技術研究開発に関わってプログラマーと一緒に新しいツールやパイプラインを設計したりするのが主な業務になります。
それに加えてセクション間だと、モデラーからモーションへのデータパイプラインの整理だったり、他セクション間のブリッジ役だったり、窓口であるなどさまざまです。あとはそこで培った知識を知らない人に啓蒙していく業務がありますね。
ですので端的に言うとサービス業です。
―――北村さん、宮本さん、サービス業ということでいいですか?
便利屋さんですね(笑)
まぁ、そうですね(笑)
―――パイプラインという言葉がよく出てきましたが、例えばプログラマーとデザイナーの橋渡しもやっているのでしょうか。
どちらかというと連携になるのですが、厳密にいうと、制作工程を組むために、テクニカルアーティストの方でかっちり決められた手続きの手順を作るみたいなイメージの方が強いですね。プランナーが近いことをされるケースも、もちろんあると思います。
―――いろいろな職種の人と関わる仕事ということですよね。
できれば各職種の知識も持っていて、マルチにできる方がいいのでしょうか。
竹井さんはエフェクトに強く、私や宮本さんはモデルに強いというふうに分かれていますね。モデル、背景、エフェクトなどそれぞれの分野に強いテクニカルアーティストがいて、お互いの強みを活かして助け合いながら連携しているイメージです。
各職種のディレクター的立ち位置というよりも、相談役のような感じです。
―――相談役であったり、まとめ役。ということはかなり偉い人になるのですか?
偉くはないですよ(笑)
あくまでも相談役でして、北村さんがおっしゃったように各自の専門軸はあるのですが、分からないなら分からないで、その時々で調べながらやっていくことはあります。
やっぱり最近は開発環境もハイエンドなので、新しい技術が出てくると、何でも知っているわけじゃないので聞かれてから調べだすこともありますね。
自身の強みがテクニカルアーティストになるきっかけになった
―――職種転換についてお聞きしたいのですが竹井さんは元々テクニカルアーティストではなかったと伺いましたが以前は何を担当されていたのでしょうか。
僕は新卒でカプコンにエフェクトマンとして入社しました。最初はエフェクトのデザイナーからキャリアをスタートして、テクニカルアーティストになったのはここ最近になります。
―――テクニカルアーティストになったきっかけを教えていただけますか。
もともと、入社した当初からシミュレーションやレンダリングの仕組みや工程、それらにまつわる業務が面白いなと思っていて、そこらへんをいろいろと触っていくうちにテクニカルアーティストになっていました。
エフェクトは、ゲームエンジンに組み込まれたパーティクルシステムと呼ばれるものを使って表現します。スプライトという板みたいなものにテクスチャを貼って、炎だったり、煙だったり、水などの質感を設定していくわけです。
パーティクルシステムが担当する部分は動きの部分と寿命で、スプライトが担当する部分がテクスチャになります。
スプライトに貼り付けるテクスチャを作るのはDCCツール(Digital Content Creation)に実装されているシミュレーションシステムで、シミュレーションした結果をレンダリングし、それをテクスチャシートに変換してエンジンで読み込んでエフェクトを作ります。
この工程が面白く、興味あることを突き詰めていくうちにそれが日の目を浴びました。
運がよかったです。
―――竹井さん的に今の仕事はすごく楽しいですか。
楽しいです(笑)。
―――逆にちょっと大変だなと思うこともありますか。
そこはやっぱりテクニカルアーティストの業務の半分を占める折衝であるとか人間関係とかですね。この人にはこういうやり取りをすると上手くいくというのはあったりします。
―――それでは次に北村さんがテクニカルアーティストになったきっかけも教えてもらえますか。
私は新卒でキャラモデラーとして採用されたのですが、新人研修が終わった時点でテクニカルアーティストに配属されたので逆にモデラー業務とかはしてないんです。
というのも新人研修中とか学生の時にパブをメインで作っていたので、パブをやりたいですって伝えました。そしたら私の師匠に当たる方がいるのですが、その方の部下に就けてもらえたんですよ。
その人がシェーダーをやっていて、そのシェーダーを勉強していくうちに知識が広がって、今はキャラとか背景とかのアート系周りの全テクニカルアーティストをしている感じです。テクニカルアーティストになった経緯として、私は特殊だったと思いますね。
―――テクニカルアーティストの業務は楽しいですか。
はい、楽しいです。私は少し飽き性なのですが、毎日毎日やる案件が違うんですね。テクニカルアーティストの業務って、この業務がこの期間あるというものではなくて相談事が舞い込んでくる感じで、2つのチームに同時にアサインされているときもありますね。
ずっと1本の長い仕事をすることもあるのですが、大体そこに違う案件とかが入ってくるので、いろいろなことができて幅広く業務を経験できるので楽しいと思います。
チームにアサインされていなくてもテクニカルアーティスト同士で案件のやり方などを聞きあって、あーなるほどそのタイトルはそうやっているのか!と情報を共有したりしますね。
―――では次に宮本さんお願いします。
北村さんと同じモデラーですよね。テクニカルアーティストになった経緯を教えてもらえますか。
私は中途入社ですが、カプコンに入社する前は8年くらいキャラモデラ―をやっていましたので、カプコンに入社してからも初めの1~2年はキャラクモデラ―をやらせてもらっていましたが、モンスターハンターの案件に携わるタイミングでテクニカルアーティストになりましたね。もちろん突然ってわけじゃなくて、もともとキャラクターモデルを作りながら周りの人にスクリプトを配ったり、シェーダーのことを自分で勉強し、その内容を周りの仲間に発信したりとか、いろいろとやっていたんですね。
そういった点を評価されまして、だったらテクニカルアーティストをやればいいんじゃないかってことで職種転換しました。
―――宮本さんはテクニカルアーティストになって大変なことってありますか。
大変なことはそんなにないかなぁ。
人間関係はみなさんのおかげで周りの方が支えてくれているから大丈夫です(笑)
求められるのは自走できる人、迎えるのは自由に意見を言い合える環境
―――どういった方がテクニカルアーティストに向いているのか。
どういう人と一緒に働きたいかという点がありましたら教えてください。
端的に言うと、情熱があってチャレンジ精神が旺盛な人ですね。
テクニカルアーティストに向いている人は、情報の入力と出力が速くて精度が高い人じゃないですかね。インプットとアウトプットをよりよくできる人は向いていると思います。
―――やっぱり頭の回転が速くて賢い人がいいのでしょうか。
そうですね(笑)
―――即答されました(笑)
多くの人の橋渡し役となるテクニカルアーティストですが、性格の良し悪しって仕事に影響あると思いますか。
性格の良し悪しは出力する結果を左右しないですね。
仮に性格が悪くても良いアウトプットを出すこともありますので、どうハンドリングするかがカギになるかなと思います。
私は中途入社なので前職と比べても、カプコンの方はコミュニケーション能力が皆さん高いなと感じますね。フランクで人柄もよくて、こういうインタビューの場だから言っているわけではなくてシンプルに私はそう感じます。これはテクニカルアーティストに限らず全体的に言えることだと思いますね。
しっかりしている人は多いですよね。自走できる人が多いですし、自走できないと多分テクニカルアーティストになれないと思います。自分にちゃんと目標があってそれを周りに発信できる人が結果クニカルアーティストになる。ですので、頭の良し悪しじゃなくてちゃんと発言して外に出せる人がこのポジションに多い気がします。
―――自分の意見が間違っているかもしれないから怖くて発言しない人はテクニカルアーティストに向いてないのでしょうか。
自分の意見をはっきり言えて、間違っているときはどう改善していくのかを話し合える人がテクニカルアーティストになれるのかなと思いましたがいかがですか。
その問題に関しては2つ要因があると思います。まず自分の意見が間違っているから言えないというのは所属する部署や会社の環境に非常に依存するところがあるのではないでしょうか。上から押さえつけるような環境だと、そのようになっていく傾向が強いと思います。カプコンの場合、役職関係なく意見を出すということに壁はなくて、意見を誰しもが忌憚なく言え、そこからフィードバックをもらえる環境です。出てきた意見に対して、頭ごなしに馬鹿げているみたいな否定はないので、意見の言い合いに関してハードルはありません。
次に否定された場合の振る舞い方なのですが、自分が発言した意見に対してそれは違いますと言われたとき、その意見のどの部分に重点を置くかで受け取り方が変わってきます。ここが間違っていますよと言われたときに自分を全否定されたと感じる人と、その箇所が間違っているから修正すればいいと思う人と2パターンあります。
前者の場合はコミュニケーションの取り方が難しくなります。後者の場合は柔軟に対応できるという違いがあるので、もし前者が入社してきた場合は考え方を教育してあげる必要があると思っていますが、後者の場合は自走して仕事をしていけるかと思います。
本当にその通りですね。私の場合は発言した方がメリットあるなと思っていまして、否定されたら怖いということよりも発言して得られるものが多いなと感じます。特にこの環境ではメリットの方が上回っているので私の場合は発言していることが多いですね。
―――面白いゲームを作ろうと思って入社する訳ですし、言わないと損ですよね。
北村さん、宮本さんはどういう人と一緒に仕事したいですか。
私としては自走をちゃんとできて、それを自分の中で情報として仕入れてから更に外に教えられる人だといいと思います。
極端かもしれないですが発言できる人であればいいと思っていて、最低限の技術とかはもちろん必要なのですが、発言できないとテクニカルアーティストである意味がそもそもあまりないかもしれないですからね。
私が思うテクニカルアーティストというのは修正してあげる役だと思っています。プログラマーとか企画とかデザイナーがいたときに、いろいろと話が広がった場合、結論としてはこうですよねっていう、鋭い突っ込みを一撃できるかできないかがテクニカルアーティストの役目だとも思っています。
そうですね、いま北村さんが言った内容とあまり変わりはないのですが、自走ができて、入力出力がしっかりできる人と一緒に仕事したいと思いますね。
―――では最後にこれからカプコンで頑張りたいと思っている方へ向けてメッセージをいただけますか。
国語と算数を頑張ってください(笑)。
それは間違いないですね(笑)
私からは、コミュニケーション能力を頑張って上げるといいと思います。
勉強しながら楽しみながら面白いゲームを作りましょう!
カプコンでは、世界一面白いデジタルコンテンツを全世界に発信できる開発メンバーを募集しています。
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室内 賢治
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ガラケー・電波基地局・電力メーター・カーナビなどの業務システムから、家庭用ゲーム・スマホアプリなどのソフトウェアテスト、ゲームデバッグ業務を10年以上にわたって携わる。 現在は、QAサポート部のインサイドセールスやPR活動など多岐にわたり担当。