カプコンが求める芯をもったリガーとは。自分から発信して周りを引き込んでいける人
カプコンが求める芯をもったリガーとは。自分から発信して周りを引き込んでいける人
1983年の創業以来、ゲームというエンターテインメントを通じて、人々に笑顔や感動を提供し続けてきた株式会社カプコン。社員が「おもしろい」、「やりたい」と感じる気持ちを大切にし、『モンスターハンターシリーズ』、『バイオハザードシリーズ』、『ストリートファイターシリーズ』など、世界中で支持される多くの作品を展開してきました。
「大阪から世界へ」を合言葉に、今後も世界一面白いデジタルコンテンツを全世界に発信することを目指す同社での仕事の魅力ややりがいについて、テクニカルアーティストとリガ―にお話いただきました。前編に続き、後編はリガーについてお届けします。
座談会登壇者
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CS第二開発統括 開発三部 アニメーション室 蓮池 千絵(ハスイケ チエ)氏
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新卒入社。インゲームのアニメーターとしてキャリアをスタート。
最初にアサインされたタイトルで作業物量の多さからスクリプトで効率化することに興味を持ち、業務の傍ら独自に勉強しスクリプトを習得。 その後主にモンスターハンターチームでアニメーションを担当しつつリグなどの作業にも徐々に関わるように。2019年からTAのグループに入り本格的にTAとして活動を開始。開発中タイトルではアニメーターと兼業でリギングやツール作成などを担当。 代表作はモンスターハンターワールド(アイルー・モンスター担当 アニメーター) ※TAとしては開発中タイトルで関わっています。
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CS第二開発統括 開発三部 アニメーション室 冨山 雪也(トミヤマ ユキヤ)氏
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新卒入社。研修後、フェイシャル業務へ。カットシーン関連のフェイシャル業務がメインであるものの、合間でいくつかモーション作業や顔以外のRig作成等やりつつ、モンスターハンターライズではイベントシーンで使用される。フェイスリグと一部フェイスモーション制作、登場モンスター【フルフル】のリグ、キャラメイク後のアニメーション補正計算方法など担当。
リガーの仕事と役割
―――ゲーム開発におけるリガーとはどういう仕事なのかを簡単に教えていただけますか。
ゲーム上ではキャラクターがさまざまなアクションをしたり、動いたりしますが、アニメーターがモデルを動かす際に使用する「リグ」と呼ばれる仕組みをセットアップする作業をしているのがリガーです。
―――骨組みを作るということでしょうか。
動く骨組み自体はすでにあって、その骨をどのような制御方法を使って動かすかという仕組みを作る仕事ですね。
モデル自体はもう存在していて、骨も入れてある物を渡してもらい、それを動かすための制御や仕組みを作っていきます。もちろん、リガーが骨を入れる場合もありますよ。
そうですね、私の方ではボーンを入れることもあります。
メッシュのみ頂いた状態からボーンを入れて、キャラクターのウェイト調整を行う場合があります。
リガーが他セクションと連携するのは
―――リガーがモデルから携わる場合もあるということですね。
それでは次に他の職種との関係性を伺いたいのですが、基本的にはプログラマーとの連携が多いのでしょうか。プランナーや他職種とのやりとりもあるのでしょうか。
プログラマーとの連携は結構あります。
プランナーとのコミュニケーションは、他のセクションと比べると少ないと思います。どちらかというとプランナーはアニメーターだったり、モデラーとの関わりの方が多いですね。
そうですね、プランナーとのやりとりはキャラメイク以外だとあまりなかったですね。
どちらかというとモデラーだったり、アニメーター、あとはシェーダー関連の方と相談することの方が多いかと思います。
―――アサイン人数は、モンスターハンターやバイオハザードなどのいわゆるAAAタイトルとそれ以外のタイトルとで人数はだいぶ違いますか。ブッキングすることもあると伺いましたが。
そうですね、ミニマムなところからすごく多人数がアサインされることもあります。メインどころのAAAタイトルは結構人数が多いですよ。
もちろん少ない場合もあります。モンスターハンターストーリーズは大きくはないかな、ミドルくらいかと思います。
リガ―は元々の人数が多くはないので、いろいろなチームの業務を請け負ってやっていることが多いです。
―――他の職種との関わりは基本的にプログラマーが多いのでしょうか。
キャラクターモデルの顔パーツで言えば、プログラマーとはプロジェクトの後半で関わることが多いです。プロジェクトを前半、後半で分けると、前半は特にモデラーとのコミュニケーション頻度が多いですね。
関わることが多いのはモデラーです。
リガーがリグを組んでモデルを動作確認した際、メッシュや骨の位置などをモデラーに直してもらったりすることもあるので、そこでやり取りは多くなります。
―――リガーのツールも進化していますね。
そうですね、だいぶ変わっています。タイトルや、環境に合わせてリガー側でツールも作っているのですが、蓮池さんの場合はボディがメインなのでツール関連も幅広く対応されてますよね。
―――ツールはプログラマーが作っているのではないのですね。
DCCツール(Digital Content Creation)と言われる、いわゆるMayaとか3DCGソフト側で使っているツールとか、それらはデザイナー側で対応します。
興味のある方向へ進んだ結果、リガーになった
―――おふたりはカプコンに入社したときからリガーだったのでしょうか。
私はアニメーターとして入社したんです。モンスターハンターなどのチームでモンスターのモーションやアイルーのモーション作成などをしていました。ですがリガーの仕事に興味がありましたので、独学で少しずつスクリプトを勉強しました。すると徐々にモンスターハンターチームでもリグの仕事をするようになり、どんどん リガー関係の仕事が入るようになってきまして、今ではアニメーター兼リガーとして仕事をさせていただいているという感じです。
―――なるほど、元々はアニメーターだったのですね。リガーになったのは会社の指示ではなく、自分の好きな方向に進んでいったということですか。
そうですね、入社して最初のアサインチームで興味を持ち、周りに詳しい方がいっぱいいらっしゃるので個人的に教えていただいていましたが、完全に流れでリガ―になりましたね(笑)
私は元々リガーの仕事がしたくて入社したのですが、最初の所属はアニメーションでした。
ただ業務としてアニメーションをやったかというとそうではなく、ボディアニメーションはあまり挟まずに、そのままリガーや、私の専門であるキャラクターの顔部分の仕事をさせてもらいました。なので基本的に顔のリグ、ツール周りをメインでさせてもらっています。
―――ご自身の興味のある方向へ進んでいった結果、今の職種に就いたということで、とても良いパターンですね。
今の仕事は楽しいと思いますが、大変だと思うことはありますか。
チームによって求められるリグの種類が全然違ったりします。チームごとに対応していく必要がありますが、それぞれのチームの特色に合わせて作っていかないといけないという点は毎回苦労します。
蓮池さんがおっしゃったようにチームのルールに対応していくということもあるのですが、今までの流れを残しつつも新しいことをしたいという要望もよく出てきます。
その際に生まれる矛盾点をどう技術的にカバーするか考えるのも難しいところですね。アニメーションの作業に関する操作形態はあまり変わらずに、出力するデータやエンジン側に必要なものを新しいフォーマットになるように組み立てるのも難しいです。
その他としては、リガー業務から外れるかもしれませんが、エンジン上でキャラメイクされた顔に対して、元の顔で作られたアニメーションに変更を加えながら流す方法を考えるのも難しかったですね。
メインで使用しているMayaとエンジンとでは計算順番などの違いがあるため、どういう計算がされるかを先に洗い出す必要がありました。プログラマーとも頻繁にやり取りさせて頂いて、処理負荷の問題等を解決するのは、なかなか大変ではありました。
―――自分ではあわせて作ったつもりなのにツールの関係で同じ物ができないことがあるのですね。実際にそういった事例が発生した場合はどのように対処するのですか。
顔の場合、最初にプログラマーの対応範囲をある程度確認しますね。その範囲からはみ出したところをリガー側の仕事として対応可能かを精査して対処する場合が多いです。
―――積極的にコミュニケーションをとる必要があるということですね。
リガーとしてこれから働きたいという方のために、どういう人がリガーに向いているか教えてもらえますか。
問題をそのままにしておきたくなくて、解決していきたいと思える人の方がリガーには向いていますね。謎解きとかが好きな人がいいかもしれません(笑)
あともう一つはモデルを動かす観点で見れば、小さい頃にアクションフィギュアとかでよく遊んでいた人はリガー向きかもしれないです。
こういう関節になっているとこういう動き方をするよね、みたいなことがわかると思うんですよね。
私としては、社交的に話しやすい人で何でも意欲的に対応してくれるような人がいいかと思います。
テクニカルアーティストっていろいろなところからさまざまな相談が来ます。
「こういう不具合が出たけど、どうしたらいいのか」とか、「こういうことをしたいのですが、どうしたらいいですか」という感じですね。ですので、相談しやすい人じゃないといけないなというのは感じます。
いろいろな相談が来るので基本的にマルチタスクで対応している感じです。
なんだったら、相談された内容が同じ事案だと思ったらマージできるなとか、そのような考え方ができる人の方がいいかと思います。
―――相談が多いとのことですが、おふたりは自分のことを社交的だと思いますか。
カプコンに入社するまでは声も全然小さくてボソボソ喋っていたのですが、仕事に慣れたらだいたいマルチにコミュニケーションが取れるようになりましたね。
あまり自分から話すことはなかったのですが、仕事をしていくうちに慣れました。
リガーをやり始めてから確実に成長したと思います。
私は話すことは苦手というか上手ではないと思うのですが、積極的に自分から発信をしたりして動くようにしています。
自分を主張できて、柔軟な考えを持っている人が求められる
―――今後リガーとして応募してほしいのはどんな人でしょうか。どういう人と一緒に仕事がしたいですか。
自分の考えを持っていて、主張が激しい人も欲しいなと思っています。
指示待ちになる人よりは、僕はこう思うけどという何かしらの意見があった方がいいですね。
自分でどんどん発信して進めていって周りを引き込んでいける人は、その時は意見が合わなかったとしても次の機会で活かせるということがあるはずだと思います。
冨山さんが仰るように自分という芯を持っていて、こういうことをやりたいという気持ちがあって、なおかつリグだったら使う人の立場に立って考えられる人ですね。
自分がいいと思うだけで進めると頑固になるので、相手の人が使いやすいかどうかをちゃんと考えられる方、柔軟な考えを持てる方がいいなと思います。
ただ業種的にちょっと難しいところなのですが、目的意識がはっきりしているか否かが結構重要になってきます。僕はこのやり方が好きだ!と言われるよりは、この部分ってもともとこれがやりたかったんですよね、こういう風にしたかったんですよねと、相手の考えを汲み取った上で、こっちのやり方のほうが良くないですかという話の持って行き方を提示してくれる人の方がいいかと思います。
―――それでは最後にこれからカプコンで頑張りたいと思っている方へ向けてメッセージをいただけますか。
リガ―はまだまだやることが幅広い職種だと思うので、自分でワークフローや開発の根幹を握りたいという方はぜひ応募してください。
中途で入社される方はカプコン以外の会社でいろいろな知識を吸収されていると思うので、カプコンにその人の目線や考え方で新しい風を入れてくださるとありがたいなと思います。
カプコンでは、世界一面白いデジタルコンテンツを全世界に発信できる開発メンバーを募集しています。
気になる方はぜひこちらをご覧ください!
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室内 賢治
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ガラケー・電波基地局・電力メーター・カーナビなどの業務システムから、家庭用ゲーム・スマホアプリなどのソフトウェアテスト、ゲームデバッグ業務を10年以上にわたって携わる。 現在は、QAサポート部のインサイドセールスやPR活動など多岐にわたり担当。