『あんさんぶるスターズ!!』などを手掛けたHappy Elements株式会社 新井代表インタビュー。オリジナルゲーム開発において“上流工程からプロモーション視点が必要な理由”と、忘れてはいけないクリエイターへのリスペクト

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『あんさんぶるスターズ!!』などを手掛けたHappy Elements株式会社 新井代表インタビュー。オリジナルゲーム開発において“上流工程からプロモーション視点が必要な理由”と、忘れてはいけないクリエイターへのリスペクト

【MV】Happy Elements株式会社 インタビュー
 

2010年4月の設立以来、『あんさんぶるスターズ!!』や『メルクストーリア 癒術士と鐘の音色』など数々のヒットタイトルの開発・運営を手掛けてきたHappy Elements株式会社。
本社・京都オフィスを拠点とした「カカリアスタジオ」、子会社グリモアによる「グリモアスタジオ」の2つの拠点では、クリエイターの個性を活かした魅力的なオリジナルタイトルの開発が日夜行われています。

「ただゲームを作っているだけでは、作品を手にとっていただけない時代になりました」と語るのは、同社代表取締役CEO 新井元基氏。企画立案時点から積極的にコミュニケーションができるマーケティングの重要性が増している点から、今後のキーマンとなり得るマーケティング/プロモーション責任者を募集しているとのこと。

今回は『あんさんぶるスターズ!!』をはじめとするタイトルを大ヒットに導いた新井氏に、同社の目指す開発体制とプロモーションの新たな在り方についてインタビューを行いました。

 

プロデューサー不在の組織から生み出される大ヒット作品

―――今日はよろしくお願いいたします。最初に会社紹介をお願いします。

Happy Elements株式会社 代表取締役CEO 新井です。Happy Elements株式会社 日本法人は2010年の設立で、最初はガラケー向けタイトル開発を行っていました。初めて大きくヒットしたのは2014年にリリースした『メルクストーリア - 癒術士と鈴のしらべ -』(以下、メルスト)で、その翌年には弊社の代表タイトルとなる『あんさんぶるスターズ!』(以下、「あんスタ」シリーズ)をリリースしています。

現在はこの2タイトルに加えて、『エリオスライジングヒーローズ』(以下、エリオス)の開発・運営も行っています。女性向けタイトルに特化しているというわけではなく「複数タイトルがある中であんスタシリーズがヒットした」という認識です。

Happy Elements株式会社の代表タイトル

© 2014-2019 Happy Elements K.K

 

―――新井様は創業期から数多くのタイトル開発に関わっていると思いますが、もともとはどういったキャリアをお持ちなのでしょうか。

学生時代からITベンチャー企業でプログラマーとして働いており、いくつかの企業を経て、前職ではブログサービスの開発などに従事していました。

その後、京都に戻ってから数名の仲間と共にゲーム会社を立ち上げ、Happy Elements株式会社の日本法人としてゲーム開発を本格的に行うようになりました。最初の頃はエンジニアや企画としても関わっていましたが、いまは組織運営や経営、マーケティングやプロモーションなどを幅広く見る立場となりました。
 

―――会社規模と、職種の割合について教えてください。

本社の京都スタジオ(カカリアスタジオ)は約300名規模で、東京にも子会社の株式会社グリモアが開発拠点を持っています。「職群」という単位でカテゴリー分けをしており、例えば“プランナー職群”にはゲームデザイナー、コンテンツプランナー、ゲームプランナーが在籍しています。ほかにも“デザイナー職群”、“エンジニア職群”などが設定されています。人数割合でいうと、デザイナーが6割以上、プランナーとエンジニアが2割弱ずつ、そして数名の管理職やバックオフィスがいるような組織構成になっています。
 

―――今回の募集対象となる「プロモーション職」は、どの職群に属するのでしょうか?

弊社の場合、プロモーションに加えてマーケティング領域も担当するケースが多いため、「マーケティングプランナー」としてプランナー職群に統合されています。1人の担当が市場調査から分析などリサーチを経てマーケティング戦略を立て、実際のプロモーションプランを作るまでを一気通貫に行います。

この概念を一般的なプロモーション職と呼んでよいかは分かりませんが、幅広い視点で売り方を考える仕事になります。現在は3名が在籍しており、全員が「あんスタ」シリーズに携わりながら、他タイトルのプロモーションも並行して行っています。

Happy Elements株式会社 新井代表
 

―――リサーチからプロモーションまで、売り方を考えてタイトルを最大化するという意味では、ある種のプロデューサー視点も必要な感覚があります。

そうかもしれません。弊社ではいわゆるプロデューサー職を置いていない点も特徴だと思います。各プロジェクトの売上に対して責任を持つのはグループリーダーと呼ばれる組織の責任者で、彼らの中にはエンジニア出身のリーダーもいれば、プランナー出身のリーダーもいます。グループリーダーが組織と売上に対して責任を持ち、マーケティングプランナーはプロジェクトの売り方を共に考えていくような体制となっています。
 

市場のニーズを的確に捉えた「あんスタ」シリーズの成功事例

―――「あんスタ」シリーズは熱いファン層の多い巨大IPですが、リリース当初から高い注目度だったと感じています。新井様が実践してきた実際のプロモーションについて教えてください。

当時はプロモーションの担当者が社内に居なかったため、私が中心になって開発チームと相談しながらプロモーションを行っていました。当初は完全な手探り状態でしたが、とにかくできるだけたくさんの方に知っていただき手に取っていただくことを考えていました。

手に取っていただくためには「同時期にリリースされるタイトルの中で最も目立てば良い」と考え、まずは徹底的に他タイトルのプロモーションを研究して参考にしました。言い方が悪いのですが、徹底的に他社のいいとこ取りをして、かつ量で上回れば良いと判断したんですね。
 

―――なるほど。他社事例を研究し、同時期のタイトルよりも量で勝れば勝てるという戦略だったんですね。これが功を奏して「あんスタ」シリーズは大いに広まったと。

ただ、これは今の時代は通用しません。当時はスマートフォンタイトルの絶対数が少なかったですし、「あんスタ」も女性向けにしっかり作られたゲームとして希少性がありました。スマートフォンタイトルにおいて、まだ本格的な女性向けゲームのヒット作が出ていない。しかし、潜在的なニーズはある――こうした中で、自分たち自身が遊びたい、欲しいと思うような自信のあるタイトルを出すことができれば、しっかりとユーザーが付いてくると感じていました。

それこそ、最初はキービジュアルを出しただけで非常に大きな反響がありました。これはプロモーションの成功というよりは、ニーズを掴んだ結果だと感じています。

『あんさんぶるスターズ!!』

© 2014-2019 Happy Elements K.K

 

―――翻って、現在はどういったワークフローでタイトルプロモーションを行っているのでしょうか?

直近にリリースしたエリオスライジングヒーローズでは、プロモーション担当者は開発終盤からの参画になりました。ゲームの全体像が完全に見えたあと、プロモーション計画を立てていくような流れでした。

ただし、これから先の時代は、もっと上流工程からプロモーション担当がプロジェクトに参画し、それこそ企画立案時点から二人三脚で仕事をしていただいたほうが良いと考えています。

「あんスタ」リリース当時とは異なり、今はスマートフォン向けのゲームが充実しており、1人が3,4タイトルを同時に遊ぶことも一般的になりました。さらに新作を遊んでもらうとなると、今遊んでいるゲームをやめないといけないような状況です。こうした中では、企画時点で「しっかりと売れる、つまり興味を持って手に取ってもらえるもの」を吟味する必要があります。
 

―――可処分時間を奪い合わなければならない時代においては、プロモーション担当が「売る目線」で企画立案から参画することが理想ということですね。

間違いないのは、「今後はしっかりとゲームを作るだけではなく、今の市場環境を見ながら企画を判断できる人材が必要」ということ。そのために、いまは社内の企画や開発フローを大幅に見直している最中です。

私達がやりたいのは、継続的にヒットタイトルを出していくことです。今の市場環境を見る限り、昔のようにただゲームを作ってリリースしたら上手くいくという時代ではなくなっています。「今の市場で戦えるタイトルを制作して、コンスタントにリリースしていく」という頭の切り替えが必要です。

弊社の場合、開発は内製中心、そして開発する対象もオリジナル作品が中心です。オリジナルな企画を、プロジェクトの序盤から「これって本当にニーズがあるのか?どんな企画なら手に取ってもらえるフックが作れるのか?」を開発者目線ではなく俯瞰的に見ることのできる目線が重要だと考えています。
 

Happy Elements株式会社 新井代表-2
 

クリエイターとプロモーターの幸せな関係を築く

―――これまでのお話の中で、プロモーション担当にも全体を見渡すような視座の高い観点が必要であるように感じました。作品づくりに主体的に参加することが求められるという意味では、よりクリエイティブに近い位置で仕事ができるのではないかと思います。

弊社には本当にたくさんの企画がありますし、「こう来たか!」と唸るようなものもあります。数々の企画の中から、どれを次のステップに進めるかの意思決定を行うためにはマーケティング的な観点が必要になります。

ただ、マーケティング的な観点が重要とはいえ、私達の方向性は「市場が求めているものを作ろう」ではないんです。ゲームはあくまでクリエイターの感性や個性で形作られるものであり、個性を殺してまで市場需要に迎合する必要はありません。むしろ、クリエイターの感性をエンハンスするような、彼らを鼓舞するようなプロモーション担当が最適だと思っています。
 

―――こうした上流工程において、御社の考えるプロモーション担当はどういった立ち回りが求められるのでしょうか?

クリエイターは尖った個性を持っていますが、作りたいものを言語化するのが得意なメンバーばかりではありません。また、明確にターゲット設定が行われた企画ばかりではありません。「この企画は誰に向けたもので、どういった部分が面白いのか」を丁寧にヒアリングして引き出して、「マーケットがあるとしたらこの規模だよ」と教えてあげて、「このチャネルにならこのくらい売れると思うから、この方向性のフックを入れてみたら?」という提案を行えるくらいの密度感は必要かもしれません。

それくらい、クリエイター一人ひとりの感性や発想は大切なものです。クリエイター一人ひとりの「面白いものを思いついたよ!」という声を新規事業推進部や経営陣がしっかり拾い、壁打ち相手となれるような組織改編も行っています。開発現場とマーケター、プロモーターの幸せな関係性が、この会社であれば作れるのではないかと考えています。

Happy Elements株式会社のカカリアスタジオ
 

―――リサーチによるエビデンスをもって、クリエイターと一緒にゲームの企画を考えていくような仕事が上流工程で求められているということですね。

現在のマーケットは、海外から規模の大きな大型タイトルが次々とリリースされ、それとどう戦っていくのかを考えざるを得ない状況にあります。しかし、私達は大規模開発を行うつもりはなく、あくまで企画の面白さで勝負ができると思っています。

「大ヒットタイトルを大規模で作りたい」というわけではなく、カカリアスタジオもミッションとして掲げている「熱狂的に愛されるコンテンツを作る」という思想に則って、好きな人に深く刺さる作品をクリエイターの個性を活かして作っていきたいんです。
 

―――ここまでいろいろとお話をうかがいましたが、改めてHappy Elements株式会社のプロモーション担当の仕事のやりがいを教えてください。

ものづくりの一番はじめの部分から携われること自体も楽しいと思いますが、プロモーション目線で見ると「良い企画にたくさん出会える」という点が面白いのではないかと思っています。

マーケティングやプロモーションにおいて、「ここが絶対に刺さる!」と確信を持って仕事ができるケースは少ないと思います。本来、マーケターやプロモーターは“良い素材”がないと仕事が難しくなるものです。そんな中、「今のマーケットには確かに存在せず、しかしごく一部の熱狂的なファンが付くであろう企画」が、いきなり目の前に置かれるんですよ。尖ったものを丸くするのではなく、尖ったまま世の中に届けるミッションは魅力的ではないかと感じています。
 

―――ありがとうございました。最後に、御社の求める人物像や、スキルセットなどがあれば教えてください。

まずは、論理的に思考ができる方を求めています。また、プロモーションの仕事はものづくりをする人たちがいてはじめて成立しますので、クリエイターへのリスペクトがあり、現場と丁寧にコミュニケーションが取れる方が望ましいです。できればゲーム業界経験者を求めていますが、エンタメや各種アプリケーションなどの責任者クラスであればハマる可能性も充分あると考えています。

あと、今回上流工程をお任せできる方だけを求めているわけではありません。担当レベルからプロモーションに携わっていただく方にも入社いただきたいと考えています。少しでも興味を持っていただいた方は、ぜひご応募をお待ちしています。

(取材・対談者:神山 大輝 / @gula_sound )

Happy Elements株式会社 新井代表-3
 

当社では、これからも熱狂的に愛されるコンテンツを継続的に生み出していくために、なるべく少数精鋭で思う存分ものづくりできるクリエイターにとって理想的な環境づくりに取り組んでいます。
そんな環境で、クリエイターと一緒に尖ったゲームを作り世の中に届けて頂けませんか?
少しでも当社に興味を持って頂けたら、是非求人募集ページをご覧ください!

 
 
To Creator編集部
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