【後編】『製販一体』、版権元も開発現場も一緒にコンテンツを盛り上げるバンダイナムコエンターテインメント流のマーケティング&プロモーション方法論

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【後編】『製販一体』、版権元も開発現場も一緒にコンテンツを盛り上げるバンダイナムコエンターテインメント流のマーケティング&プロモーション方法論

 

『アイドルマスター』シリーズ、『テイルズ オブ』シリーズ、『鉄拳』シリーズなどの自社IP(=キャラクター等の知的財産)だけでなく、『ドラゴンボール』『NARUTO -ナルト-』『ONE PIECE』などの世界的IPを権利者(以下版権元)からお借りして、家庭用(コンシューマー)ゲームやスマートフォン向けゲームアプリなどのネットワークコンテンツを世界中に展開するバンダイナムコエンターテインメント。パブリッシングに高い専門性を持つ企業ながら、「製販一体」の考えのもと、マーケティング・プロモーション担当者もコンテンツの開発初期段階からプロジェクトに参画。プロデューサーや版権元、時にはプラットフォーマー等多くのステークホルダーと綿密なコミュニケーションを取りながら、最適な展開方法を模索しています。
今回は同社のIP関連タイトルにおいて、幅広い領域でマーケティング・プロモーションを担当する白椿彩香氏、UKやスペイン(バルセロナ)での勤務経験をもとにグローバル市場に向けた展開をリードする渡邊春樹氏の2人に、バンダイナムコエンターテインメントでの具体的な業務内容やマーケティング・プロモーション業務の魅力について聞きました。

 

海外におけるマーケティング・プロモーションの理想形

―――続いて、海外マーケティングおよびプロモーションについてお聞きします。まずは渡邊さんが海外赴任に至った経緯を教えてください。

渡邊:入社後、定期的に海外での仕事に興味がある旨は伝えていました。2015年から2017年までは国内向け、2018年からは海外向けプロモーション業務を担当し、その年の後7月から Bandai Namco Entertainment UK Ltd. へ出向となりました。

UKでは、ターゲットとする市場と近い位置で、日本国内のプロジェクトが策定した施策方針をベストな形で実現に繋げるための仕事を担当していました。現地でなにが支持されているかは、現地にいないと分かりません。日本国内からプロモーション業務の経験を積んだ上で、課題感やニーズを理解し、両者間のハブとなることで高精度かつスピード感を持って施策の実行をサポートしていました。

 

―――海外マーケティングと国内マーケティングは、方針や目的、アプローチなどはどのように異なるのでしょうか?現地に行ったからこそ見えた視点などがあれば教えてください。

渡邊:「海外」と広く表現されがちですが、アメリカもヨーロッパもアジアもそれぞれ異なる価値観を持っています。特に私が出向していた「ヨーロッパ」は地域名でしかなく、この中にスペイン語圏もフランス語圏もあり、それぞれ異なる文化を持っています。「ヨーロッパ全体に対する最適解」が存在しないことを、私はリアリティを持って明言できます。

日本では多くの方が通勤中にスマートフォンでゲームアプリをプレイする一方で、ヨーロッパでは国や地域によって通勤手段もさまざまで、地下鉄ではそもそも電波が入りづらいところもあったりします。

 

―――広い国土と異なる言語、文化圏など、日本国内とは条件が根本から違うように感じます。

渡邊:日本はひとつの言語でカバーしやすいマーケットなので、TVCMなどのマスメディア広告の影響は強くなりがちです。一方、例えばアメリカなどは言語はひとつでも、TV自体のチャンネル数が膨大な国です。全土に対してTVCMのような広告を打つことは効率的ではなく、なにより国によってマスメディアから得る情報に対する信頼度も大きく異なります。

また、ヨーロッパにおいては言語に加えて文化も各地で異なるため、生活スタイルや通信環境によっても国や地域ごとに好まれる適切なアプローチも変わってきますね。

 

―――この流れで「諸外国」とひとまとめにするのは適切でないかもしれませんが、プロモーション手法において、国内で好まれるプランが通用しないケースもあるのでしょうか?

渡邊:「目に入ってくる情報を、どのように理解するか?」というプロセス自体が違うという印象です。日本は限られたスペースにたくさんの情報を入れることが一般的で、情報が詰まった広告物やパッケージ、デザインなど「それを見れば全てが分かる!」といったような形式が好まれると思っています。

一方、海外では情報を詰め込み過ぎない方が一般的に好まれる傾向にあります。情報量もシンプルに絞らなければいけないし、うまく余白を使い、大切な情報を際立たせることで一番伝えたいメッセージをしっかり届けていたりします。これらは広告バナーを中心に、さまざまな媒体でも意識するポイントです。

 

―――この他にも、印象的だったエピソードがあれば教えてください。

渡邊:当時、バンダイナムコエンターテインメントが展開するモバイルゲームはドイツ語に対応したタイトルが少なく、ドイツは英語能力指数が高いこともあって英語での展開がメインでした。

でも、あるとき Bandai Namco Entertainment Germany GmbH を訪れた際に現地のスタッフに話を聞いたら、「もちろん英語は分かるし喋れるけど、ゲームは空いた時間に娯楽としてやるもの。だから、なにも考えずにスッと入ってきて、楽しめる言語で遊びたい。それが一般的なんじゃないかな」と言われてしまって。たしかに私も英語は分かりますが、言語が選べるなら日本語で遊びたいです。英語で代替せず、ユーザーにとって本当に親切な形でコンテンツを届けることの重要性を学びましたね。

 

バルセロナで Bandai Namco Mobile S.L. の立ち上げに参画。国内外の経験から得た「相互理解」の重要性

―――その後、2019年2月からスペイン・バルセロナで Bandai Namco Mobile S.L. の立ち上げに参画しています。この経緯や、そこで得た経験について幅広く教えてください。

渡邊:UK時代、毎月1週間程度はフランスのリヨンにある Bandai Namco Europe S.A.S. のオフィスでモバイルチームのメンバーと一緒に働いていました。当時日本からフランス拠点に出向していたメンバーが「欧米マーケットにおけるスマートフォン向けゲームアプリのシェア拡大」をテーマに開発・マーケティングの両機能を有した新規オフィスの設立に向けて動いており、そのビジョンを聞いた自分も共感し、そこで手を挙げて初期から本プロジェクトの立ち上げに加わることになりました。

バンダイナムコエンターテインメントは、プロジェクトに応じてグループ内外の開発会社と連携できる点が強みのひとつです。一方、欧米のゲーム会社は開発もマーケティングも自社で完結しているケースが多く、双方の目線合わせや連携が行いやすいことから、よりユーザーのニーズに適したコンテンツづくりを行える体制とも見受けていました。だからこそバンダイナムコブランドを活かしながら、現地の感覚を持ったメンバーが現地で開発・マーケティングを行い、そこからワールドワイドに届ける仕事は、非常に面白い挑戦になると思って参画しました。立ち上げ後はマーケティング寄りのポジションで、UK時代と同じく国内本社と現地とのハブとしてコミュニケーションをする仕事が多かったですね。

 

―――帰任した後は以前と同じくマーケティング・プロモーションを扱うチームでの所属となりましたが、海外経験を経たことで業務内容に変化はありましたか?

渡邊:海外で培った経験があるからこそ、各種施策提案や意見を求められたときの説得力が増したと感じます。さまざまなデータや調査結果に基づいた仮説だけでなく、生活のなかで身についた感覚や現地メンバーと一緒に働いて得た学び・経験を生かした提案ができるようになりました。自身としても仕事が進めやすくなりましたし、知識が社内に広がることによって部署や事業部門全体のグローバル市場に対する理解度も底上げされていっている感覚があります。

 

国内も海外も、どんなIPでも。“マーケティング&プロモーション”担当に必要なスキルと考え方

―――ここからは白椿さんにもお伺いしていきます。これまでは国内、国外と分けて扱ってきましたが、双方の連携施策などはあるのでしょうか?

白椿:もちろんあります。渡邊と一緒に取り組んだ事例では、時期は少し遡りますが「Bandai Namco Entertainment Lineup Presentation 2018」というアメリカで実施したオフラインイベントが印象的でしたね。その当時に発表したゲームアプリ『ドラゴンボール レジェンズ』において、「物理的距離があってもPvPがリアルタイムに遊べる」という要素をアピールするために、浴衣を着て日本国内からリモート出演した覚えがあります。

渡邊:国内側は白椿、アメリカ側は私が主導で進行しました。GDC(Game Developers Conference:毎年アメリカで開催される世界各国のゲーム開発者向けイベント)に合わせる形で企画したイベントで、私は現地の代理店と話をしながら会場選定や発表内容の検討、各種制作物の準備、外部スピーカーとしてプラットフォーマーに登壇いただくゲスト講演などの取り仕切りを行いました。

現地に各国のメディアをお呼びして、発表の様子やその場で撮影したプレイデモをもとに記事化を進めていただくなど、私自身としても多くの経験をさせてもらった大きなプロジェクトとして印象に残っています。

※クリックすると動画が始まります
※2018年3月21日時点の情報です
 

白椿:欧米以外の事例でいうと、プロジェクトによっては、他の国や地域とも連携することも多くあります。『ドラゴンボール レジェンズ』などの大規模なタイトルはワールドワイドの合同キャンペーンを行うケースも多く、ベースとなる施策を国内本社で考えて、打ち出し方は各地域の担当とも相談して調整する方法もありますね。

 

―――マーケティングやプロモーションに携わる際、歓迎されるスキルがあれば教えてください。

白椿:さまざまなIPを取り扱いますので、これまで接してこなかった作品も積極的に楽しむ気持ちが大切です。

スキルという意味では、月並みですがコミュニケーション能力が必要だと思います。版権元等外部パートナー会社とのコミュニケーションはもちろん、社内においても部門を超えて数多くの社員と関わりますので、私自身は「この人が言うのだから協力しよう」と周りから思ってもらえるような信頼関係構築につながるコミュニケーションを心掛けています。フットワークが軽く、誰とでも積極的に話せる人はフィットしやすいと思いますね。カルチャーとしても助け合う文化がありますし、業務をキャッチアップするためのドキュメントも整備されているので、臆さずに質問しながら学び、吸収いただける方には成長できる環境だと思います。

渡邊:海外マーケティングの場合、どうしても英語力は必要になります。と言ってもビジネス英語は実際に仕事をしながら身に付いてくる部分もありますので、それより重要なのは「異文化を理解しようとする意識」だと思います。

日本語はすごくハイコンテクストで、伝えたことの裏を読むようなやり取りも発生する一方で、イギリスとアメリカで伝え方や言い回しに差はあるものの英語では基本的に直接的な表現が好まれます。スペインやフランス、アメリカなどのマーケティング部門のメンバーと一緒に仕事をするにあたって、異なる文化圏、異なる言語の中で丁寧なコミュニケーションができる人が望ましいですね。

 

―――ありがとうございました。最後に、バンダイナムコエンターテインメントでのマーケティング・プロモーションに興味のある方にメッセージをお願いします。

白椿:これだけのIPを扱えるということ自体が当社の大きな強みです。魅力的なIPを版権元やグループ内と緒に盛り上げていくような経験は、なかなか得難いものだと思います。

もうひとつの良いところは、仲間が多いこと。データマーケティング部門の皆さんやプロデューサーの方々、品質管理などの皆様、家庭用のプロモーションチーム、その他たくさんの皆様から上長に至るまで、本当に多くの方が協力的で、分からないことがあっても親身になって一緒に考えてくれます。マーケティング・プロモーション担当一人ではゲームを作ることも届けることもできません。一致団結、みんなで同じ方向を向いて仕事をしている点が魅力だと思います。

渡邊:バンダイナムコエンターテインメントは、日系エンターテインメント企業の中でもトップクラスに海外拠点が多い会社だと思います。業務範囲や活躍できるフィールドがすごく広いですし、社内外、国内外を問わず多くの人と一緒に仕事をするのは刺激的な経験になります。

海外のマーケティング部門とも直接やり取りを行いますし、聞きたいことがあれば各地域にいる仲間にすぐにチャットで質問ができたりと、コミュニケーション手段も豊富です。日々学びと挑戦のある現場だと思いますので、そのような環境に興味を持っていただける方とぜひ一緒に働きたいですね。
(取材・対談者:神山 大輝 / @gula_sound )

 

 

©バードスタジオ/集英社・東映アニメーション
©Bandai Namco Entertainment Inc.

 

バンダイナムコエンターテインメントのマーケティング・プロモーション職は、色々なIPをゲームコンテンツから盛り上げるために、マーケティング戦略を検討し効果的なプロモーション戦術をたてて実行推進していきます。

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