【後編】GPTRACK50 小林代表インタビュー:少数精鋭チームに求める人材像とは?

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【後編】GPTRACK50 小林代表インタビュー:少数精鋭チームに求める人材像とは?

 

カプコンを退職し、自身のスタジオ GPTRACK50(ジーピー・トラック・フィフティ)を立ち上げた小林氏。「新しい遊び、体験、オリジナルIPを生み出していく」ゲームスタジオの在り方や理想とする開発体制、そしてグローバル市場&メディアミックス展開を見据えた作品づくりのノウハウについて、小林氏自らに語っていただきました。

 

GPTRACK50が挑む少数精鋭でのコンシューマー開発

 

―――カプコンを退職後、GPTRACK50を立ち上げた理由を教えてください。

退職後すぐに次のビジョンがあったわけではないんです。ただ、これまでさまざまなエンターテイメントに関わってきたので、今度は映像や演劇を作ってもいいと思いましたし、芸能事務所なども面白いかもしれないと思っていました。これまで通りゲームの仕事をするのも楽しいと思いますし、とにかくエンターテイメント業界であればどんなことでも挑戦してみたいと考えていました。

そんな中、知人の紹介でNetEase Gamesとミーティングの機会を得て、そこで「小林さん、スタジオを作りませんか?」と仰っていただいたんです。こうした経緯から「コンシューマーでオリジナルIPを生み出していくゲームスタジオ」としてGPTRACK50を立ち上げることとなりました。

―――立ち上げから8ヶ月ほど経ちましたが、現在はどのような規模で開発を行っているのでしょうか?

社内は十数名のメンバー、少数精鋭部隊でゲーム開発を行っています。各セクションのプロフェッショナルがいて、彼らが外部のパートナーと協力をしながら作品を作っていくスタイルになっています。開発中のタイトルは完全なオリジナルIPで、実写映画やアニメなどへのメディアミックス展開を目指して開発を進めています。

―――通常、コンシューマータイトル開発には多くのクリエイターが関わります。コアメンバーは十数名とのことですが、チームビルドの思想などはありますか?

前職では少人数チームも内製のみ200人のチームも経験しました。こうした中で、自分が一番好みなのは「メンバー全員の顔がしっかり見れて、各自の好みやこだわりを理解した開発体制」であると気付きました。

100人だと、顔と名前を覚えるのに精一杯です。200人だと、最初から最後まで会話をしない方さえ出てきます。また、過度な分業制を敷いてしまうと、ゲーム全体の構造が分からなくなったり、コアの部分を伝えきれなかったりして、作業だけをお願いする人が増えてしまいます。

コンシューマータイトルの作り方はいろいろありますが、私の場合は分業制ではなく、少数精鋭の全員が日常的に会話をしながらゲーム開発に取り組む環境が良いのではないかと考えました。GPTRACK50では、決して私だけが作りたいゲームを作っているわけではなく、メンバー全員が初期段階から参加し、それぞれの人物の特性を反映した作品を作っています。

 

―――距離の近いチームでゲームのコアを作り上げ、外部の方とも協業しながら大きな作品を作り上げていくということですね。小林さんはプロデューサー歴が長いですが、プロデューサーとしてはどのような仕事を行うことが多いのでしょうか?

これまでは総合プロデューサーとしての仕事が多かったですね。プロデューサーにも種類があって、例えばゲーム専門で予算や人材を管理するプロデューサー、映像専門のプロデューサー、あるいは漫画の場合は編集者がその役割を担う場合もあります。ひとつのIPを広く展開する際、こうした皆さんと話し合い、総合的にジャッジをする監修としての役割を自分に置いていました。

昔はゲームさえ面白ければ売れていた時代もありましたが、PlayStation 2時代からはそうもいかなくなりました。現場だけを見て宣伝をまったくしない、あるいは市場だけを見て現場が疲れてしまう、その両方を避けるように、全体を見て仕事をするように心掛けています。

世界で通用するアクションゲームの「定義」

―――お話いただける範囲で、現在開発中のタイトルについて教えてください。

詳しいことは語れませんが、ジャンルでいうと「アクションゲーム」です。コンシューマー向けのタイトルで、グローバル市場を目指して開発を進めています。マルチでワイワイ進めるような作品というよりは、まずはシングルプレイでしっかりと遊べるアクションを作ろうとしています。これに加えて言えることといえば……ホラーや戦国モノではありません。新しいものを作りたいと思ってスタジオを興しましたので、これまでにない作品をハイエンド環境で作り上げることを目標にしています。

―――ここでいうグローバルとは、意図的に「海外ウケを狙う」ということでしょうか。

そうではありません。グローバル市場の中心は北米や欧州になりますが、あくまで私たち日本人が面白いというゲームを、日本人の気持ちで作ろうとしています。ただし、ターゲットユーザーが面白いと思える要素に合わせてチューニングをする必要はあります。これは秘伝の書があるわけではなくて、自分の経験値と市場を見て、合致するものをチョイスしていく感覚が近いかな、と思います。

例えば、戦国時代における戦国大名の台頭などは、文化的な背景が異なる海外では理解されにくいと思います。個人的には、目が大きくて可愛い女の子ばかりが出る状況や、深い文化的背景が必要な題材を作品に入れ込み過ぎないのが重要だと考えています。

―――その意味では、海外スタジオを多く有するNetEaseとの協業関係がプラスに働くことはあるのでしょうか。

中国のスタジオのメンバーとの交流はありますし、ゲーム開発の進め方を議論することもあります。『Identity V第五人格』メンバーが来日したときには、バイオハザードのファンだということでサインをしたこともありましたね。また、開発自体は独立して行われていますが、NetEase本社の機能として持つ「どのスタジオでも使えるデザイン部署」などは業務委託的に使わせていただいています。

NetEaseは数多くスタジオを持っていますが、どのスタジオも仲間でありライバルです。ただ、カプコン時代も、隣のプロジェクト同士は仲間でありライバルでした。その感覚は今も案外変わらないですね。

 

―――制作したタイトルのマルチ展開を見越しているとの発言もありましたが、映像媒体などの横展開に向いたIPとはどういったものでしょうか?

「ゲームを作ろう!ゲームができた!それでは映像を作りましょう」といった順番で考えるのではなく、最初から映像や漫画などの媒体に展開するつもりでゲーム開発を行うという意味です。ここはゲーム本編では描けないから映像に持っていこう、このストーリーは小説版で描こうなどといったプランを企画段階から考えています。

これはメディアミックス展開においては非常に重要な考え方だと思います。「どの媒体に出すか」は決まっていても、最初から中身をしっかり固めている場合は多くありません。これは、ゲームの開発現場をしっかり把握しているプロデューサーだけができる仕事だと思います。

―――ありがとうございます。少数精鋭での開発と綿密なプロデュース、この両輪で進める姿勢がGPTRACK50の特徴であることが良く分かりました。最後に、これから一緒に働きたいと考える人材について教えてください。

全員一丸となってゲームを作っていく関係上、分業制ではなく「何でもやります!」という方のほうが向いていると思います。これは、コアメンバーには自分の得意分野を存分に発揮して開発に臨んで貰いたいという理由で、あえて不得意なことはせず、場合によっては外部の方の力を借りながらいい作品を作っていきたいという姿勢です。

スタジオとしては、まずは向こう10年頑張りたいと思っています。今はベテラン中心で全員が30代以上ですが、将来的には新卒採用や育成も視野に入れる必要があります。人数が限られるぶん、コミュニケーションは円滑だと思います。ご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひよろしくお願いいたします。
(取材・対談者:神山 大輝 / @gula_sound )

 

GPTRACK50(ジーピー・トラック・フィフティ)は、『バイオハザード』『デビル メイ クライ』等のプロデューサーを務めた小林裕幸が代表となり、オリジナルIPを生み出していくゲームスタジオです。制作したIPは、ゲームだけでなく、実写映画やアニメ等にメディアミックス展開していく予定です。

全世界向けのアクションを主体としたハイエンドのコンシューマーゲームタイトルを生み出すため、開発のコアメンバーを募集しています。一緒に挑戦をしませんか?

 
To Creator編集部
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