【前編】株式会社ケーツーだからこそ味わえるAAAタイトル開発の醍醐味を、3DCG制作を担う若手メンバー2名に訊く

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【前編】株式会社ケーツーだからこそ味わえるAAAタイトル開発の醍醐味を、3DCG制作を担う若手メンバー2名に訊く

【MV】株式会社ケーツー インタビュー(1/2)
 

2000年の設立以来、時代の先端を行くゲーム開発を続ける株式会社ケーツー。2008年には株式会社カプコンのグループ会社となり、『バイオハザード』シリーズや『モンスターハンター』シリーズなどの人気タイトル開発に関わってきました。

今回は同社で働く若手クリエイター2名に対し、現在の働き方や社内の雰囲気を聞くとともに、カプコン内製エンジンであるRE ENGINEを用いた開発ワークフローについても詳しくお伺いしました。

 

ポートフォリオに対する丁寧なフィードバックが入社の決め手になった

―――これまでのご経歴と、現在の職種について教えてください。

安藤:開発部 第一グラフィック室所属 キャラクターアーティストの安藤です。現在入社4年目で、学生時代は伝統工芸の技術を用いた作品制作を行っていました。当時は刀や兜などの金属工芸をはじめとするアナログな作品を作っていましたが、今は一転してMayaやZbrushを用いたフォトリアルな3Dモデル制作を業務として行っています。今日はよろしくお願いいたします。

國枝:開発部 第二グラフィック室所属 シネマティックアーティストの國枝です。大学卒業後、一度は飲食業界に勤めましたが、その後デジタルハリウッド大学でCGを学び、第二新卒として3年前に入社しました。

普段はMotion BuilderとRE ENGINE(※)、場合によってはPremiereやAfter Effectを扱いながら、カットシーン制作全般を担当しています。事前に撮影されたモーションキャプチャデータを受け取り、Motion Builder上でカメラワークを付けた演出カットを制作し、ゲームエンジン側で確認する流れで業務を行っています。
 


 

カプコン社の内製ゲームエンジン。『バイオハザード7 レジデント イービル』(2017)から使用されている統合開発環境で、現在も同社の開発基盤となっている。
 

―――株式会社ケーツーに入社した理由やきっかけがあれば教えてください。

國枝:大学時代は舞台演劇のサークルに所属し、演者として舞台に立っていました。ゲームは昔から好きでしたし、演技の経験もありましたので、業界を目指すにあたって必然的にアニメーションや演出に興味を持つようになりました。

ケーツーを選んだ理由は、早い段階から大きなタイトルに関わる経験を積めるからです。自分の好きな作品に関わっている会社でしたし、キャラクターのアニメーションが特に洗練されている印象を持っていたため応募しました。

安藤:もともとゲーム開発に興味を持つきっかけとなるタイトルを開発していたのがケーツーだったのが一番の理由です。「このゲームを作っている会社はどこだろう?」と検索して、そのまま会社説明会に参加して、ご縁があって入社することになりました。

今でも印象に残っているのが、会社説明会後にポートフォリオを見ていただく機会が設けられており、そこで懇切丁寧に添削をしていただいたことです。いまの自分になにが足りないか、ケーツーで必要な能力はなにか、それを端的に示すポートフォリオはどういったものかなど、本当に細かくアドバイスを頂いて。「なんて良い会社なんだ!」と思って、ここ1本で就職活動を進めました。

國枝:今は私たちも学生作品のアドバイス会に出席する立場ですが、たしかに担当する社員は綿密なフィードバックを返している印象がありますね。アニメーションであればキャラクターの重心移動がしっかりしているか、資料を見て丁寧に作ってあるか、あるいはシネマティクスに興味がある学生ならカメラワークや構図による効果、場合によっては「このストーリーの演出ならこの方が良いよ」という具体的な提案まで、時間の限りお話させていただいています。
【取材風景1】シネマティックアーティスト 國枝氏
 

―――作品を良くするための工夫の追求や丁寧なフィードバックは、社風がそのまま反映されているのかもしれませんね。ちなみに、ケーツーが求めるポートフォリオは具体的にどういったものなのでしょうか?

安藤:添削していただいた際の受け売りですが、私からお答えしますね。ケーツーの作品はフォトリアル3DCGが中心です。このため、キャラクターアーティストとして一番見ておきたいのはデッサン能力です。ストレートにデッサン能力が伝わる人間の素体モデルと、手首から先の手を細かく作るポートフォリオがあると良いと考えます。

これに加えて、敵キャラクターとなるクリーチャーを担当するケースもあるので、動物の3Dモデルもあると良いですね。クリーチャー的なモデルだとデザイン的な要素も反映されてしまうので、できれば実在の動物をリファレンスにしたモデルが適切です。

これらに加えて、もし可能であれば鉛筆画でもよいので、デッサン画も末尾に数点添えていただけると分かりやすいです。

【取材風景2】キャラクターアーティスト 安藤氏
 

多彩なツールを用いた3DCG制作のワークフロー

―――実際の業務内容について詳しく教えてください。

安藤:ケーツーでは、人型のキャラクターモデルはスキャンベースで制作します。私の場合は、実在する人物を3Dスキャンしたデータを受け取ってから作業がスタートします。スキャンしたばかりのデータをZbrushで綺麗に整えて、その後はMayaでリトポロジーを行ったのちにセットアップ作業を行います。完全な人型ではなく、例えば人体構造からなにかが生えていたり、キャラが変形する場合はZbrush側で造形を作っています。

テクスチャはAgisoft Metashapeで復元した後、Photoshopで人間らしい肌の質感を付けていきます。汚れや汗はSubstance Painterで足すこともあります。
 

―――キャラクターアーティストの場合、RE ENGINE側での作業は発生するのでしょうか?

安藤:モデル制作自体はDCCツールで全て行いますが、セットアップ後の揺れもの制御などはRE ENGINE側で行う場合があります。その他にも、最終的なルックの微調整をシェーダー側で行ったり、目に落ちる影の量を細かく設定したり、そういった見た目に関する部分はキャラクターアーティスト側で調整しています。
 

―――最終的なルックの調整はエンジン上で行うということですね。シネマティックアーティストの業務内容やワークフローについてはいかがでしょうか。

國枝:ディレクターが定めたイベントリストに則った字コンテとモーションキャプチャデータを受け取り、これをもとにカメラワーク等による演出を付けていきます。カメラはMotion Builderで手付けしており、最終的な確認はRE ENGINE側のタイムラインでチェックします。映ってはいけないオブジェクトを非表示にするなど、設定面を触ることも多いですね。
インゲームにおいてはプリレンダーの映像制作は行いませんが、字幕タイミングの確認やボイス収録などのガイドとなる仮動画をPremiereなどで書き出して配置することもあります。

字コンテやモーションアクターの撮影データを参考にカットシーンを制作することが多いですが、場合によってはモーションデータだけが送られてくるケースもあります。こうしたケースでは自分なりのカメラワークを付けて演出できるので、個人的にはすごく楽しいですね。

【取材風景3】シネマティックアーティスト 國枝氏
 

―――プリレンダー映像は使用しないとのことですが、インゲームのイベントシーンは全てシネマティック班が制作するのでしょうか。それとも、スクリプトベースの会話シーンなどはプランナーなどが設計するのでしょうか。

國枝:ここはケースバイケースで、複雑な演出や印象的なカメラワークが必要になる場合や「ここはリッチにしたい」という意向があれば私達が制作を行います。ちなみに、最終的なライティングなども別のチームが担当しますので、あくまで私達はカメラワークの業務が中心にはなりますね。
安藤:そういう意味では、キャラクターアーティスト班とエンヴァイロメント班も業務の割り振りは独特かもしれません。ケーツーの場合、武器などのキャラクターにアタッチして使用するプロップはキャラクター班が制作します。キャラクターが触れて動きが入るオブジェクトであれば、石ころひとつでもキャラクターの領域です。逆に、通常の背景や、撃って壊れるオブジェクトなどは別の仕組みで動いているため、完全にエンヴァイロメントの領域です。
 
 
 
To Creator編集部
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