テクモ出身・起業家のゲームプロデューサー2人が振り返る「ゲームプロデュースとセルフプロデュース 私が来た道・行く未知」後編
テクモ出身・起業家のゲームプロデューサー2人が振り返る「ゲームプロデュースとセルフプロデュース 私が来た道・行く未知」後編
多くのGAMEクリエイターは、新卒でゲーム会社に入社し、社内で昇格しながらマネジメント、あるいはスペシャリストへの道を歩んでいきます。
今回、長年ゲームプロデューサーとして活躍され、現在では会社経営者でもあるお二人をお招きし、新卒入社から転職、そして起業~独立に至るキャリアとセルフプロデュースについて、そしてこれからのゲームプロデュースについて語っていただきました。
前編で飛び出した「デザイナーの寿命30歳説」。
では、デザイナーは30歳になるまでにどんなキャリアを積み上げていけばいいのでしょうか?
続きをご覧ください。
―――お二人のキャリア志向には違いがありながら、結局独立していくタイミングも方向性も似通っているのが興味深いですね。
デザイナーの寿命30歳説というのは、スペシャリストでありながらゼネラリスト的な要素も必要、ということですか?
長谷川氏
会社が年齢相応に求めていくのは品質監修や教育、マネジメントなどの管理力です。これだけしかできない(例えば3Dのキャラモデリングしかできない)というのは若い時はいいですけど、歳を重ねるとだんだんきつくなっていきますよね。なので、その先の人生がそれでいいのか?というのは会社が決めることではなく、その人が決めていかなければいけないです。
選択肢は管理力だけではありません。それ以外の業務もあるわけです。中には他職種に行く人もいますし、そういう意味では設樂が一番サンプルとして面白いと思います。彼はデザイナー出身ですが、企画もやりますし、マネジメントもする。さらにはゲーム以外の企画も立案します。それが正しいということではないけど、ある時に、一旦立ち止まってこの先40歳50歳にどうゲーム業界に貢献していこうか。という思考を持って取り組んでいくのはとても重要なことだと思います。
―――お二人のお話を照らし合わせるとプロマネ制度がうまく機能しているんですね。
設樂氏
そうですね。企画とかデザイナーとかプログラマーは職種で採用しますが、仕事をしながらゼネラリストを見極めていく、という感じが会社にはありました。「コイツは何でもやれそうだな」みたいな感じ、その(自身のもともとの)職種をはみ出したところの仕事ができそうな片鱗を見せた奴がプロマネに引き上げられる、という印象でした。
私は美大出身ですがそんなに絵が上手い方ではなく、絵で食っていくぞ!というよりは、せっかくゲーム業界に入ったのだから、デザイン以外の仕事がやれるチャンスがあったらどんどんやろう!みたいなモチベーションを持っていました。
UIを担当していたとあるゲームで、先輩たちが作っていたバトルシステムがどうにも気に食わなくて、1年上の先輩プログラマーと私の二人で勝手に溜め撃ち型のバトルシステムの試作を作っちゃったらそれが採用された、という経験があるのですが、そういう感じで少しずつ企画の領域にはみ出して仕事をしていくと、私自身はデザイナーなのに企画職のミーティングに毎回呼ばれる、みたいなことが起きてきて、その流れでなんとなくいろいろなことをやっていると「プロマネやってみない?」という話になり、突然自分のキャパオーバーの仕事をドーンと預けられるんです。(笑)
そこで初めて自分のこなせる仕事量の限界とか能力の壁を感じたり、人に任せることを覚えたり。当時は今よりも長時間労働が当たり前の業界だったので、プロジェクトの途中で1~2回入院したりしながらとりあえずプロジェクトはやり遂げるのですが、ボロボロになりながらも、結果仕事人間としてはひと皮もふた皮もむけていくような仕事環境だったのは間違いないと思います。これが20代で経験できる会社が当時のテクモでした。
―――テクモ時代をきっかけに自分の限界を見極めつつキャリアの幅を広げていったところが、結果として今に繋がっているのですね。
最終的にお二人が独立を選択した理由をお話しいただきたいのですが、転職のチャンスやきっかけもある中で、独立開業を選んだのはどうしてでしょうか?
設樂氏
昔から何でもやりたがりなのですが、専門的なところはやっぱり専門性のある人にやってもらうのが一番効率的だと思っています。だから、テクモ時代からやり続けていることではありますが、プロデューサーというポジションから世の中に新しいものを企画から提案して、実際のモノづくりは上手な人に任せる、というスタイルは自分自身しっくりきています。じゃあ、そのプロデュースという仕事は組織にいないとできないのか?というとそうではなくて、結局お金の都合やサービス展開のためのビジネスモデル、ビジネスモデルがなければそれを作っていくことも仕事に含みますが、あとはサービスを形にする手段を持ち合わせていれば独立しても可能だと気付きました。
角川ゲームス時代、隣の席に田中謙介さんが外部契約プロデューサーでいらっしゃっていて、田中さんは『艦これ』の生みの親なのですが、受託で番組制作をしながら同人活動をされていて、そこから『艦これ』も生まれてくる、それを見たとき、あ、そういう働き方ってすごくいいな、と自分の中のロールモデルとして参考にしたいと思いました。一方の手で自分のスキルを活かした業務委託の仕事をいただきながら、もう一方の手では自分のやりたいことをやる、という生き方ですね。これは自分自身がすごく幸せになるな、と。業界の中でいろいろな会社さんとネットワークを構築してきて、やりたいことをやるためにあらゆる準備をして、自分のやりたい気持ち的なタイミングも見極めて独立したのが今年でした。
長谷川氏
私も近いところはありますね。やりたいことをやるという点です。それだけでなく理由は複合的ではありますが。
この先ここにいた時に、自分はどこを目指すのか、そう思い立って考えたときに、25年というのが一つの節目になったのが大きいです。このラインをどう引くかは人それぞれだと思います。
あと、私は365日24時間いつでも連絡してくださいというスタンスで仕事をしていて(苦笑)、それこそ正月からでも連絡を受けますし、必要でれば仕事します。昔から海外と連絡を取っていたり、外部の制作会社を動かしていたこともあり、「今休み!」なんて、なかなか言えないんですよね。もうその時点で会社員としてどうなのか?って働き方ですが、今はそういうことを気にせず相変わらず365日24時間好きにできているので、それも込みで良かったと思っています。
―――設樂さんには田中謙介さんというロールモデルがいらっしゃって、長谷川さんは自力で突破されたんですね。
設樂氏
やりたいことをやっている人ってあまり時間とか関係なしにやっている人が多いですよね。10時から19時までが仕事で、プライベートは守りたいです、という人は独立には向いていない気がします。好きなことをやっている人は土日だろうが夜だろうか思いついたら企画書を書いていたりしますから。そういうふうに生活と仕事が溶けている人が独立には向いていると思います。
―――これからのキャリアテーマ、あるいはライフテーマについてお聞かせください。
今後のご自身のゲームプロデュース、キャリアプロデュースをお話しいただけますか?
長谷川氏
私自身はいけるとこまでは行きたいと思っているのですが、やれることを厳選して取り組んでいきたいと思います。若い開発者の教育を立体的に広げていきたいなと。その中で一番は、興味を広げていくことが必要だと思っています。自分がやっている仕事の周辺業務に興味を持ってもらう。発注した人が書いた仕様書に興味を持ち、自分が作ったデータをプログラマーに渡した後、どうやって画面に出力しているのかに興味を持ち、そういう興味の幅を広げていくことを啓蒙していきます。もちろん自発的に動く子もいます。そういう子は伸びますね。
設樂氏
キャリアについては自分の得意不得意を常に冷静に見ながらやっていくのがいいのかなと思っています。そこに自身のやりたいことのレイヤーが重なり、さらに周囲から期待されること、周囲の流れみたいなものも重なってくると思います。仕事の広がりは結局人の広がりですよね。一緒に仕事をした結果、次またお願いします、と違う仕事が入ってくることもあるので。周囲から期待されることに応えていくことはとても大事だと思っています。
私自身はやりたいことがようやく最近収斂されてきた感はあって、やはり異業種の方々との仕事は楽しいな、と。
ゲーム業界の方と仕事をすると変にキャリアの上下関係やパブリッシャーかデベロッパーかみたいなところでコミュニケーションのマウンティングが発生したりしがちですが、異業種同士だとお互いに敬意を持ったところからフラットに仕事に取り組めることができて、すごく心理的に健全だなぁと思うんです。
ゲーム業界って結構デジタルの最先端に近いことをやっているので、他の業界の方からは羨望のまなざしで見られることが多いのですが、ゲーム業界では普通のサーバー技術でも、異業種の方からはすごい高度なことをやっていますね、すごいトラフィック数を捌いていますね、みたいに言われたりします。
また、ゲーム業界の人間は課題解決能力も高いと思っています。このボタンを押したらこのキャラがジャンプして、その上でそれが面白いか面白くないか?みたいなところまで解決していくのはやはり高度なことをやっていると思います。
サーバの話にしろ課題解決の話にしろ、ゲーム業界の方々はとても社会貢献しやすい環境にいるはずですし、そこをうまく異業種の皆さんとコラボしながら社会貢献×事業につなげていきたいと思っています。
―――異業種コラボとなると、設樂さんはゲームプロデュースからビジネスプロデュースまで、手掛けられているんですね。
設樂氏
そうですね。異業種と組んでの新規事業となりますと、ビジネスの構造ができあがっていない領域もありますから、お客さまからどのようにお金をいただくか、もしくはBtoBでどういった会社からからプロジェクト費用を出してもらおうか、という組み立てからやることも多く、大変ですが面白い点でもあります。
お二人の視点は違うものの、これからのキャリアプロデュースに共通して持っているものが社会貢献に至っているのは興味深いところです。
デザイナーとしてキャリアをスタートした長谷川 仁 氏、設樂 昌宏 氏が、これまでのキャリアの分かれ道でどう考え、何を選択したか、ご本人のお話は大変リアルで共感する部分も多かったのではないでしょうか。現在のご自身の迷いや悩みに共通する部分もあるかもしれません。
これからはゲーム業界をはじめ社会に貢献していきたい、と語るお二人。今後の活躍からも目が離せません。
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