【前編】カプコン子会社なのに外部タイトル実績も豊富。数多くの大規模タイトルを手掛ける3DCG制作のプロ集団「ソードケインズスタジオ」とはいったい何者なのか?
2025/06/02
【前編】カプコン子会社なのに外部タイトル実績も豊富。数多くの大規模タイトルを手掛ける3DCG制作のプロ集団「ソードケインズスタジオ」とはいったい何者なのか?

2018年5月に設立されたゲーム専門の2D/3DCG制作会社「ソードケインズスタジオ」。コンシューマー・モバイルを問わず数多くの大型IPタイトルを手掛けながら、2023年7月26日には株式会社カプコンの完全子会社となり、新たな一歩を踏み出しました。同社がユニークなのは『モンスターハンター』シリーズや『STREET FIGHTER 6』などカプコンの大型タイトルに深く関わる一方、いまも他社プロジェクトに積極的に参加している点。今回は多様な現場で活躍する3名のクリエイターに、ソードケインズスタジオならではの仕事スタイルややりがいについて聞きました。
―――まずは皆さまの自己紹介をお願いします。
折笠氏:背景デザイナーの折笠と申します。前職ではスマートフォン向けタイトルのキャラクターモデルとエンバイロメント制作に携わっており、ソードケインズスタジオではエンバイロメント専門としてさまざまなタイトルに関わっています。
主な業務内容はMayaやSubstance Painterなどを用いた背景制作と、ゲームエンジンを用いたレイアウトです。UnityやUnreal Engineだけでなく、カプコン社の内製エンジンRE ENGINEを使用することも多いです。
仲宗根氏:キャラクターモデラーの仲宗根と申します。新卒入社し、今年で3年目になります。主にキャラクターモデル制作と調整を担当しており、特に『FINAL FANTASY VII EVER CRISIS』には長く関わっています。
松本氏:アニメーターの松本です。これまで7年ほど映像系のCGプロダクションでアニメーション制作に携わっておりましたが、ゲーム開発に専念するため2021年9月に入社しました。現在はキャラクターアニメーションやカットシーン制作を担当しています。
―――ソードケインズスタジオの会社概要について教えてください。
折笠氏:ソードケインズスタジオはゲーム専門のCG制作専門会社です。メンバーは30名ほどで、キャラクター、エンバイロメント、アニメーションがそれぞれ等しい人数でいるようなイメージです。カプコン子会社となった現在はプロジェクトの6割ほどがカプコンタイトル、4割ほどが他メーカータイトルとなっています。


―――メインで使用するDCCツールと、ソードケインズスタジオが得意とするアートスタイルを教えてください。
折笠氏:アセット制作はMayaメインで、ハイモデルではZbrush、テクスチャはSubstance PainterとPhotoshopを併用しています。DCCツールは背景班もキャラクター班も同様です。背景特有のところで言えば、プロジェクトによってはSpeedTreeなどを使用することもあります。
ソードケインズスタジオ全体としてはフォトリアルからセルルックまで幅広く、プロジェクトに合ったルック開発ができる点が特徴です。私自身の経験としてはフォトリアルが中心で、最近では『PRODUCT: DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の自然地形を担当しました。また、タイトルによってはグレーボックスの調整からお任せいただくこともあります。

仲宗根氏:キャラクター班はフォトリアルなハイエンドモデル制作が多い傾向にありますが、もちろんデフォルメ調やセルルック表現のキャラクター、プロップを作ることはあります。ただ、私も携わった『チョコボGP』などセルルック系のタイトルにおいても、Mayaでモデル制作を行い、Zbrushでディティールアップする流れを踏襲することが多いですね。
松本氏:アニメーション班はほぼMayaだけで完結しています。最近はモーションキャプチャで撮影されたデータのブラッシュアップが多いですね。ハイエンドゲーム開発は規模拡大が続いているので、いまは1日で500フレームほどのアニメーションを2,3件は納品できるような体制になっています。『モンスターハンターワイルズ』では人型キャラクターやNPC系、アイルーなどコミカルなキャラクターも担当しました。
―――ソードケインズスタジオは2023年にカプコンの完全子会社となりましたが、現場に変化はありましたか?また、現体制になってからのメリットなどもお聞かせください。
折笠氏:社員が子会社化を知ったのは設立5周年パーティのタイミングでした。聞いた瞬間は期待半分、怖さ半分でしたね。カプコンの子会社になるということは、自分が過去にプレイしてきたカプコンのビッグタイトルに関われるということ。その期待感が大きかった半面で、相当高いクオリティが求められるであろうと思いましたので、その点は不安もありました。
仲宗根氏:小さい頃から『モンハン』シリーズをプレイしていて、学生のときも同シリーズを意識したポートフォリオなどを作っていました。その本家本元に携われるのはとても嬉しく、純粋にモチベーションになりましたね。
松本氏:私もポジティブな印象しかなかったです。「カプコンの子会社」と言えば、家族や友人相手に話した時も、すぐにどんな会社か分かりますから。また、モーション班は設立当初からカプコンにお世話になっていたと聞いていますし、私自身も子会社化前からカプコンタイトルに関わっていたので、大きな心配はありませんでした。


折笠氏:直接的な変化という意味では、カプコンの専用回線を引いたので、RE ENGINEが自社でも自由に使えるようになりました。背景班はその恩恵を最大限に活かして、エンジン上のレイアウト作業をやらせていただけるようになりました。
その結果、アセットを並べるレイアウト作業だけでなく、グレーボックス調整から関わることも増えました。カプコン側で用意された仮モデルの配置を実機上で確認する中で、私自身も「ここの導線をもっと強くして良いのではないか?」「この建物の建築様式が気になる」など主体的に提案をするようになりました。大型タイトルの企画やレベルデザインから関わらせていただけるのは、ソードケインズスタジオ以外ではなかなか経験できないことだと感じています。
松本氏:このおかげで、製品版と同じ環境でルックを確認しながらクオリティを追求することができるようになりましたね。また、細かい部分ですが、ファイルサーバー経由ではなくカプコン側のサーバーに直接データをアップロードできるようになったのも実務者としてはありがたいです。
他にも、カプコンのリードクラスの方に直接技術的な内容を質問できるような仕組みも整えていただいており、日々勉強させていただいています。
(後編は、2025年6月9日に公開を予定しています。ご期待ください。)
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