セクションを越えた濃密なゲーム作りに挑戦できる Tango Gameworks(ゼニマックス・メディアグループのゲーム開発スタジオ)クリエイター座談会 前編
セクションを越えた濃密なゲーム作りに挑戦できる Tango Gameworks(ゼニマックス・メディアグループのゲーム開発スタジオ)クリエイター座談会 前編
世界中に名だたるゲーム開発スタジオを擁するベセスダ・ソフトワークスの一員として、完全オリジナルタイトル『サイコブレイク』シリーズをリリース。日本から世界に、確かな存在感を放つTango Gameworks(ゼニマックス・アジア株式会社)が現在、幅広く人材を募集しています。
そこで本記事では、現在Tango Gameworksに所属しているクリエイター3名と、初代『サイコブレイク』ではプロデューサーを務め、現在は開発マネージャーとして各種ゲームタイトルのマネージメントを担当する木村雅人さんとの座談会をお届けします。「セクションを越えて意見を出しあい」、「クオリティ最優先で」ゲーム開発を進めていくのがポリシーという、同社の特徴について語ってもらいました。
座談会登壇者
飯塚康洋氏
エンバイロメントデザイナー
『サイコブレイク』シリーズでは背景制作はもちろん、ギミックや空間設計、プレイヤーを楽しませる為のレベルデザインなどを幅広く担当。
菊池公瑛氏
VFXアーティスト
『サイコブレイク』シリーズでは炎や水といった自然物や自然現象から、銃器のマズルフラッシュやクリーチャーの攻撃など、様々なエフェクトや画面効果全般を担当。
木村雅人氏
開発マネージャー
Tango Gameworksでは「かなり珍しい」という、マネージメントに専念するスタッフとして、ゼニマックスグループ本社との折衝や、開発の「いろいろなめんどくさいこと」を担当。
畠山耕一氏
アニメーター
『サイコブレイク』シリーズではクリーチャーの様々な挙動のアニメーションや攻撃モーションなどを担当。プログラマーやプランナーと共に、ゲームの様々な駆け引きを作り上げた。
“ゲームクリエイターであれ”という理念が作る フラットに意見交換ができる環境
――本日の本題、Tango Gameworksの開発スタジオとしての特色についてお話していただく前に、ゼニマックスグループ、ベセスダ・ソフトワークスとの関係性の説明からお願いできますか?
まず、ゼニマックス・メディアというグループの構造を説明すると、北米に本社を置くベセスダ・ソフトワークスという世界的なパブリッシャーを中心として独自のゲームをそれぞれゼロから開発をするスタジオが13世界中にあるというのが分かり易いでしょうか。その中のひとつが僕たちTango Gameworksなんです。
ゼニマックス・アジア株式会社は、パブリッシャーも開発スタジオもある法人なので、説明するのがややこしいのですが、ベセスダ・ソフトワークスのゲームの日本での販売拠点であると同時に、日本発の作品を世界に向けて作り出すゲーム開発スタジオTango Gameworksがあるという感じでしょうか。
けっこう立ち位置がわかりづらい感じはありますよね。『サイコブレイク』シリーズをベセスダのどこか(海外)で作っていて、Tango Gameworksはそこからグラフィックを受託されて作っていると思われたり、あとは『Fallout』のような、ベセスダの海外タイトルに携われますか? と聞かれることも多かったり(笑)。
『サイコブレイク』シリーズはゼロからすべてウチ、Tango Gameworksで作っているんですけど(笑)。逆に他のスタジオの開発に携わることは、基本的にはないです。技術交流の場はありますけどね。
――それではスタジオの特色に話しを移しましょう。“フラットに意見が言い合える環境”、“クオリティ最優先”が、Tango Gameworksを説明する際のキーワードになるかと思いますが、まずはこの辺りからお話しいただけますか?
そうですね。まず基本理念として、私たちにはアニメーター、背景、デザイナー等、いろいろな職種・ポジションの人がいますけど、なによりも”ゲームクリエイターでありましょう”という考えが主軸にあります。面白いものを作る、考えるのが僕らの仕事、ユーザーを楽しませることを考え出すのがゲームクリエイターであるという理念です。その基本理念があるから、ユーザーのためになる、これをこうすれば面白くなる!等と思ったことを実現するためには、制限なく意見を出しあいます。
――飯塚さん、菊池さん、畠山さんが『サイコブレイク』シリーズ制作時に、本来の役職を越えて担当したパートがあれば例として教えてくれませんか?
それだと私が、一番わかりやすく肩書き(VFXアーティスト)と違うことをやっていると思います。私はサバイバルゲームのようなミリタリー系の趣味を持っているのですが、初期のコンセプトアートに描かれていた銃器を見て、「これは構造上動かないでしょ」と、気になる箇所をいくつか見つけてしまいました(笑)。そこで意見を出したら、ミリタリー系統に寄った武器のデザインやモデルは、全部私が担当することになりました。初代『サイコブレイク』の開発途中に入社したため1作目は詰め切れ無かったところがあるのですが、『サイコブレイク2』の武器に関しては、デザインとラフの3Dモデルを私の方で作って、それを資料と一緒にモデル班に渡してフィニッシュまで制作してもらいました。あと『サイコブレイク2』の武器の場合は、元々あったクロスボウ型の武器に変形ギミックを持たせて、1作目でユーザーさんから不満点として上がっていた、クロスボウが射線のジャマをする問題を解決しました。
もともとは銃から出るエフェクトを作る役割だったのに、銃そのもののデザインも担当するようになったと。
そうなんですよ。Tango Gameworksの場合、背景アーティストという肩書でも、ただ背景を作るだけ、ということは基本的にないです。弊社の背景アーティストは、担当箇所の空間でどういう敵や武器、ギミックを置いてどう遊ばせるかなど、レベルデザイン的なことまで考えながら背景制作を進めていくのが仕事なので。もちろん企画の担当スタッフやプログラマーとも相談しながらやっていくんですけど、そうなるといろいろな仕様が現場で決まることが多いです。プランナーとエンジニアとアーティストが同じ目線で一緒に作っていきました。『サイコブレイク2』だと、菊池と私とプログラマーの3人だけであるスペースを作ったら、そのままゲームに採用されたこともありましたね。
プランナーなしでもステージが作れたってことだよね?
そうです。3人だけで作ったのは開発終盤でみんなが忙しかったことも要因なんですけど(笑)。ともかく、担当マップの背景要素だけを単体で作りましたっていうアーティストはほとんどいないはずです。 通常、浅いキャリアの人は、小物だけ制作というケースも多いと思いますが、私はこのマップを全て作ったんだって言えるような仕事をお願いすることが多かったですね。『サイコブレイク2』の時も入社間もない若いメンバーにひとつの空間を丸ごとやってもらいました。その方がゲーム開発として勉強することも多いし、達成感もあるかなということで、あえてそうしている面もあります。
――畠山さんは?
私はアニメーターなのですが、『サイコブレイク2』ではラスボスパートの遊びを考案したり、敵の登場演出のカットシーンなんかも自分で考え制作した事がありました。 モーションキャプチャーに関しても、光学式のキャプチャースタジオに撮影しに行く事も多いのですが、社内にも磁気式の簡易キャプチャー設備があり、自分でアクターした動きを元にアニメーションを作ったりもしています。 あとは、社内でフェイシャルキャプチャーの撮影ができないかと挑戦していたりもします。 手作り感満載なのですが、ヘルメットやアクションカメラを借りて試行錯誤したりもしています。 そういう研究も、代表の三上※はやって良いと言ってくれる人なので。
※Tango Gameworks代表、三上真司氏。サバイバル・ホラーの生みの親。卓越した作品を世に送り出し続けるゲームクリエイター。
三上は「ゲームの面白さにとって、よきものであるならば、プラスになるのなら何でも取り込もうよ」という気持ちがすごく強い人、プランニングやアイデアだけでなくて、技術的にもそうなんです。だから挑戦もいろいろできていると思います。あと畠山はキーパーも担当してるから、1作目のダウンロードコンテンツ(以下、DLC)の話作りにも関わってるよね?
そうですね、一作目からずっとキーパーの担当をしていました。 キーパーは頭が金庫になっているユニークな敵なのですが、ミステリアスで得体が知れない、不気味なキャラクターであることを伝える為に、各セクションのキーパー担当者がアイデアを持ち寄り、何度も話し合いをして攻撃や出現演出などを作りましたね。 DLCでまさか主役になるとは思っていませんでした(笑) DLCでは一作目での演出を生かしたギミックを入れたりして、本編とは違うキーパーならではのゲームになったのではないかと思います。
キーパーに人気が出てDLCの主役になった時には彼のバックストーリーを作ったんですけど、そのアイデアはアニメーターやモデラーといったキーパーの担当スタッフから上がってきたんです。ただ暴れるだけでは面白くない、キーパーというキャラクターを深堀して、彼はなぜこんな姿になったのかをユーザーに見せたら面白いんじゃないか、という提案でした。
――役職や立場によって意見が言える、言えないみたいな上下関係はないと?
はい。ただ決定権ははっきりしていて、最終的に決めるのは絶対にディレクターです。でもゲームをよりよくできると思ったらすぐに意見は言える、そういう話をすることはまったく構わないというスタンスですね。
慣れれば直接三上に意見も言いに行ける、距離感の近いスタジオでもありますね。ガチガチの組織図みたいなものもないですし、マネージャーも、基本的にはプレイイングマネージャーを望まれているので。
このスタジオでは、「上の人に言いたいことが言えない、理不尽だ」みたいなことで悩むのはほぼないんじゃないかなと思いますね。
後編では、AAAクオリティがどのように生み出されるのか、Tango Gameworksが大切にしているものや未来像を語って頂きます。お楽しみに!
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